百田尚樹「夢を売る男」感想・レビュー

ルソン島の戦争の本を4冊買って、まだ読んでいないのが2冊あるんですが、ちょっと重すぎるんで、気分転換に、百田尚樹先生の本を読んでみました。

百田先生、百田新党あらため日本保守党の、ツイッターことエックスのフォロワー200万人達成おめでとうございます。パチパチパチ。

お祝いに、ご本は、ちゃんと購入させていただきました。ご本は、子どもがマンガをレンタルしに行ったツタヤで買いました。小説はレンタルしてないんですねー。(レンタルしてたら買ってなかったんかい!)

本棚には、まだ読んでいない百田本がたくさんありました。いずれは全部読むつもりですが、パラパラッと何冊かめくって、今回は、なるべくお気軽に読めそうなのを選びました。

それがこちら「夢を売る男」です。小説家の百田先生が、小説業界、出版業界をネタにした物語です。

ルソン島の本は一冊読み終わるのに、何週間もかかりましたが、「夢を売る男」は二日で読み終わってしまいました。

なにしろ面白い。物語の展開が早くて、次々をお話を追いかけてしまいます。百田先生がYouTubeで話されていた業界の裏話的なことも書かれてて、ああ、この話、言うてはった!と嬉しくなったりもします。

物語の主人公の牛河原部長は、丸栄社という出版社の編集長です。この会社は、ジョイントプレスという方法で出版する業を主としています。「ジョイントプレスは、自費出版とは違うのです」ということなんですが、出版にかかる経費は、主に著者が持つ、という点では、似たようなものです。

才能があると勘違いしている、自己顕示欲の強い、素人の作家希望者を、牛河原部長が口八丁でその気にさせて、高額の出版費用を持たせて、契約してしまうのです。

先生とか主婦とか、自分がインテリだと思い込んでいるおバカな人を、次々とカモにして、契約させてしまうのは、ひどいなあ~と思いつつ、なかなか爽快です。

クレーム対応も抜群で、勉強になるんです。

前半は、出版社と作家のやり取りの、いろんなケースが面白く続くのですけど、途中からライバル社が現れて、ドラマチックな展開になっていきます。このライバル社が、悪辣なのです。

牛河原部長の勧誘もなんだかサギっぽいですが、まだ出版人の矜持があります。

お客様は読者ではなくて、著者であるというところが一般の出版社とは違っているのですが、高額で契約していただく以上は、満足してもらう、リピートしてもらうことを大切にしています。

陰ではお客様をバカにしてボロクソに言っているのですが、我々は夢を売ってるんだ、喜んでもらわないといけない、お互いにウィンウィンでなければいけないという理念が、部下にも徹底されているのです。

ライバルの狼煙社は、マルチ詐欺みたいなもんで、顧客満足なんかどうでも良くて、新規のカモを刈り取るような阿漕な商売です。

そんなんをのさばらしていたら、我が社にも悪影響がある!業界の為にもならん!ってことで、潰しにかかります。この戦いがまた面白い!

後半は、出版社同士の壮絶なバトルが描かれ、ついに狼煙社は倒産に追い込まれます。スッキリ爽快!

その後また、日常の業務に戻りますが、最後に泣かされるシーンが来ます。

前半のエピソードの中に、モヤモヤとした布石が打たれていたのが、最後に昇華するのです。

丸栄社がカモにするのは裕福な物好きであって、生活に困るようなことを著者にさせたらあかん!と牛河原部長が部下の女子社員をたしなめる場面があったのですが、それがドンデン返しで、こうきたか!

唯一涙が出て、ページが濡れたシーンでした。最後の一文に持ってくるところ、さすが百田尚樹やなあ~。

実に面白かったです。

実は私、自費出版のカモにされかけたことがあります。

どこの会社だったか忘れましたけど、ナントカ賞に応募したのです。

内容は、子供のころにしたイタズラの話。

「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」というブログ小説がありまして、そのファンのコミュニティがミクシーにありまして、その中に「毒者(読者)がやったイタズラ話を告白しよう!」みたいなコーナーがありまして、私も子供のころのエピソードをいくつか投稿したら、けっこうウケたのです。

こんな話、なんぼでもあるで、と思ってたところに、ナントカ賞の応募がありまして、面白半分に送ったのですね。

そしたら、電話がかかってきました。「受賞は逃したけど、本にしませんか、費用はあなたもちで」という内容で、「夢を売る男」にでてきた勧誘文句と同じです。

費用は数十万円というところ。

なんか歯の浮くような言葉でおだてられて出版をお勧められましたけど、私は自分を見る目がわりと冷静なのか、そんなもん売れるかい!と正常な判断ができまして、あっさりお断りしました。

当時も、単に本を作るだけなら、ブログをそのまま本にする機能とかありました。アメブロやったかな?

富士フィルムのフォトブックを作るサービスみたいなもんです。自分用とか、親戚友達に配るだけなら、そんなんで十分ですよね。アマゾンなら作成から販売までできます。

そういえば、youpublishなるネット上のサービスもありましたけど、あれ、消滅したのかな。ジェームススキナーが作ったやつ。

牛河原部長の丸栄社は、担当の編集者がついて、厳しい校正もあり、締め切りで追い回して、本物の作家気分を味合わせるサービス付き。装丁もちゃんとした本にして、実際に書店に配本し、国会図書館にも納められるというところまでやります。売れる保証はないですが。

詐欺会社は、応募作品をそのまま適当にペーパーバックみたいにして、配本したことにして、金を巻き上げるってものです。

私に電話をかけてきたのは、価格から考えて、詐欺会社の方じゃないかなあ。騙されなくて良かった!

でも、牛河原部長になら、騙されたなあーと思いつつ、あんがい自分の本ができて嬉しがっていたかもしれないなあと思ったりもしたのでありました。

エッセイ集とか、小説とか、書いて本にしてみたいですね!

太極拳のテキストは作っておりますけど、これは自己顕示のためではないし、ベストセラーになって大金持ちを狙っているわけでもないし、一緒に練習している人にタダで見せているだけ。

出版したら売れるで!と勧めてくれる人もいますが、世に出すなら、私が死んでからにしてくれ、とさえ思っております。

私自身が成長するたびに、書き直して更新しております。死ぬまでブラッシュアップ、練りつづけるつもりなんです。

太極拳は、死ぬ寸前まで上達が止まらないと思うので、テキストも死ぬ寸前まで更新が止まらないことでありましょう。

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