ここのところ勁と力について、いろいろと考察してきましたが、正統派の理論を書いてみます。
先日、安田先生に習いまして、というかだいぶん前にも、しかも、何回も教わったような気がする理論です。
私の作りかけの教科書にも、勁については、継ぎ足し継ぎ足し、かなりの分量になっております。(まだまだ完成には遠いです。)
先日あらためて習ったのは、勁は骨を通るという理論です。
「勁」も「力」の一つではあるのです。現代日本語では「力」でまとめられておりますが。英語ならどっちもパワーです。
力の中でも、精錬された、特に効率的な力が「勁」です。
「勁」でない力は、区別して「拙力」と呼ばれます。ちなみに「勁」にも上手い下手があるので「巧勁」とか「拙勁」に分けられます。
一般的に、筋力は筋肉の収縮により発生します。筋肉が収縮することで、腕を曲げたり伸ばしたりできます。
筋肉の収縮で、直接的にモノを引っ張ったり、つかんで投げたりするのが、筋力です。筋肉量が多いと、大きな力が出ます。筋肉量が少ないと、力は小さいです。
これが一般的な力、いわゆる「拙力」ですが、「勁」は筋力が直接、モノを引っ張ったりするんでなくて、筋力は骨を動かして構造を変えるために使われます。
アーチ型構造とか、ピラミッド構造とか、石を積み上げるだけで成り立つ構造ってありますね。釘とかアロンアルファを使わなくても、重力の作用でうまいことバランスが取れる構造です。
小さい筋力でも、骨を上手に組み立て、武術的でナイスな構造を作ることはできます。そこに地球の引力とか、相手から入力される重さとか加速力が、絶妙なバランスで釣り合ったり、もしくは釣り合わなかったりして、崩れたり、崩れなかったり、浮いたり沈んだりします。
筋肉は、骨を動かす程度しかエネルギーを使っていませんが、絶妙な構造が、武術的な作用を発生させています。
骨を効率よく組み立てるとき、筋肉は「螺旋」の動きをしています。螺旋は糸を綺麗に丁寧に巻くイメージです。糸を巻くイメージとは、すなわち「纏絲」です。
螺旋の働きを用い、絶妙な構造を作るための訓練が、基本纏絲功であり、套路です。
螺旋状の力の働きが直線的な力を生み出します。直線の力は、最短距離を最速で伝わります。骨を通るかのようです。これが「勁」です。
勁は、地球の引力と、相手との関わりの中で生まれる力ですから、宇宙空間の無重力の中で、一人で踏ん張っても出てこないような気がします。やってみないとわかりませんけど、おそらく、たぶん、アカンでしょう。
以前、中国の人工衛星だかロケットの中で宇宙飛行士が太極拳をしている動画を見たことがありますが、太極拳としては成立しないんじゃないかなあ? しらんけど。
ということで、今回は、ちょっと真面目に理論的に考察してみました。というか、習ったことをそのまま思い出してまとめてみました。
変態的感覚派向きの説明ではなかったかもしれませんが、理解の足しになりましたら幸いです。
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