「地を這うように低く」と、指導いただいたのです。
アルファロメオスパイダーとかの車の話ではなくて、太極拳の話です。
それでこの頃は、骨盤を、ぐいーっと膝の高さくらいまで低くして、套路をやっています。
これまで、あまりそういう指導はされませんでした。
どっちかというと、高い姿勢で良い、形を正確に、という訓練を受けていました。修行の段階が変わってきたのでありましょう。
というか、低い姿勢は、すでにだいぶん前から、さほど苦でもなくなっております。
雀地龍の基本功を毎日やっているうちに、楽々できるようになりました。床磨きとか階段掃除も低い姿勢でやってるし。
日々の運動で、骨盤とか大腿骨の動きが良くなってきたのでしょう。力任せの踏ん張りは不必要です。スッと低くなって、スッと起き上がれます。
これができるようになってきたからこそ、「地を這うように低く」という新たな課題が示されたのでありましょう。
昔は、低い姿勢での表演を見たら、すごい!達人や!と思ったものですが、今となっては、まあ、普通、というか、崩れてしまって、ちゃんと立ててない、無理せんといたら? というような感想を持ってしまったりします。
低くやるコツを聞かれることもありますが、コツを伝えたところでできるものではありません。日々の練習で、骨盤を柔らかくして、筋肉もつけましょう、としか言いようがないです。
できない人が、無理して低くやろうとすると、お尻を突き出して、前のめりになって、背中を反らせて、膝がつぶれて、虚霊頂勁とか立身中正とか、何の要諦も満たせてない姿勢で、もはや立ち上がれぬ、敵がいたら、なにやってんの?と思われながら、蹴り殺されるポーズになりがちです。
体はまっすぐなのですよ、というと、背骨をめいっぱい反らせて頭を上げようとされますが、そうじゃないんです。高く立とうが、低くなろうが、同じです。腰回りを柔らかくしないことには、低い姿勢は無理なんです。体壊しますので、やめときましょう。というようにしてます。
私が思うに、昔の支那の人々は、日頃、腰を低く落として生活や仕事をしていたので、あえて武術のためのトレーニングをしなくても、下地はできていたのだと思います。
生活習慣によって、もともと出来上がっていた体に、武術プログラムを組み込むだけで、自然と達人になっていけた、と思うのです。
しかし、現代日本社会の進歩的な生活に慣れて、肉体が退化した我々は、武術をインストールする前に、下地というか、土台から作り直さねばなりません。
その下地作りは、スクワットだとか、ベンチプレスだとか、ルームランナーじゃないですね。
基本功、といいたいところですが、その基本功の姿勢を作るところから苦労しますので、やっぱり日々の生活習慣が先かなあという気がします。
トイレは和式に変えて、掃除機やモップは捨てて箒と雑巾、洗濯機じゃなくてタライと洗濯板、食事はちゃぶ台で、移動は徒歩か自転車または馬、これで足腰が鍛えられます。
薪を割って竹筒でフーフー息を吹き込んで五右衛門風呂を沸かせば、肺活量もアップ。
これで、太極拳の要諦がすんなり入ってくる肉体が準備できましょう。達人への道の近道じゃなかろうか。
また、そういう原始的な生活習慣に慣れておけば、災害や有事の際の生存率も上がりましょう。
というか、災害や戦争が起これば、そういう生活に戻ってしまって、武術を理解しやすくなるのかもしれません。
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