Uさんお悩みの勁の話、さらに考察してみました。
というか、站樁功をしていて閃いたのですけど。
勁といいますか、推手には速度の領域があると思うのです。
自動車の運転に喩えてみましょう。(得意技)
初心者が自動車を走らせるのは教習所の中です。指導を受けつつ、エンストやら脱輪やらしながら、つっかえつっかえ自動車の操作になじんでいきます。
教習所の環境は市街地を模しています。交差点があって信号があって、変化に富みます。
地方の田舎に行けば、信号が無かったりします。人と車が同じところを通行していて、どっちもノンビリしてるみたいな。
山道に入れば、気持ち良いワインディングです。そうかと思えば、崖から落っこちそうな「酷道」もあります。
先日のN先生との推手動画、途中で早くなったと思ったら、いきなり飛ばされる、あれは市街地から山道に入り、ワインディングでノリノリになったところ、崖から落ちた、といえましょう。アトラクションとして、そういう世界を皆様に見ていただいたわけですね。
高速道路は快適です。ぼんやり走っていてもわりと安全。
自動車走行の極限は時速300㎞オーバーのサーキットとか、WRCのラリーとか、パリダカでしょうか? これは格闘競技とか、戦闘行為に当たりましょう。
極限環境は高速域だけとは限りません。下町の裏道とか、狭くて、人も自転車もごちゃごちゃで、うっかりしているとぶつかってしまう、極低速での繊細な操作が必要な気の抜けないシチュエーションもあります。(大阪の、とある地域では、止まっていても人がぶつかってきます。)
自動車の運転でも、これだけ違った領域があるのです。
さて、何が言いたいかといえば、推手の場合、自分と相手の走っている領域が同じとは限らないということです。
領域が違っていることに気づかないと、推手はなんだか噛み合いません。
違いが分かっていれば、相手の領域に合わせることもできるし、自分の領域に相手を付き合わせることもできるし、相手が不慣れな領域に引き込んで自滅させることもできます。
勝ち負けに利用するなら、領域展開して相手を巻き込めばよいです。(五条悟!)
指導であれば、相手の領域に合わせつつ、ちょっとずつ世界を広げてあげて、相手の上達を促すこともできます。
良き指導者は生徒に合わせます。市街地走行が丁寧にできていなければ、自分はつまらなくても、じっくりつきあって、やみくもに山に走りに行ったりしないでしょう。楽ちんだからって、高速道路ばっかり走っていても指導になりません。
よろしくない指導者は、生徒を自分の得意な領域につきあわせて混乱させます。
左折の際は3秒前に合図を出し、安全確認の上、道路の端に寄って、徐行で通過、ハンドルは速やかに戻して直進、というレベルの人に、コーナーに入る前にフルブレーキ、ヒール&トゥでシフトダウンして、タイヤが縁石をかすめるラインを取ってフル加速、タイヤが流れたら、逆ハンでカウンターを当てるべし!なんて、できるわけないです。
逆に、生徒がワインディングコースをグイングイン走るレベルになっているのに、指導者の方が付き合えず、市街地から出させないのもダメですね。
コーナリングは、アクセルワークでスムーズに駆け抜けよと教えるべきところ、右折左折は徐行!とか言ってたら、次のレベルに進めません。
Uさんが勁がわからないという話は、もしかすると、思っている領域ではない領域で、合っているとか違っているとか言われたんじゃなかろうか? という気もしたのです。
見てないので、実際のところはわかりませんけど。
ちなみに私は、オバサマ方相手の時は、基本的に相手の領域内からでません。ハンドル切るの遅れて衝突ですねーくらいのもんです。
意気の良いヤングな人なら、一緒にワインディングに行ってツーリングです。ヒートアップするとコーナーを曲がり切れず転倒とかしょっちゅうですが、推手ですから安全です。
勘違いしてイキがっている人は、酷道に連れて行って落としたろか、と思いますが、しません。
初めての人が、ラリーコースを走っている我々に紛れ込んできて自滅する、ということは、たまにあります。(異流派交流会で)
なお、安田先生の推手は、ええっ、こんなとこに道があったの!? とか、交通ルールが違った!とか、空飛ぶ車? みたいな異次元のレベルなので、同列には語りがたいです。
コメント
こんばんは、Uです。
私の拙いコメントをきっかけに、2回続けて「勁」について深掘りしていただき、ありがとうございます!
自動車の運転状況に喩えた推手の領域の話、分かりやすかったです。
私が、「勁が分からない!」と混乱していた原因が、もしかしたらその辺りにあったのでは、というご推察、見事な深読み!とは存じますが ・・・ 違うように思います。
例えばWさんが私の相手をして下さった際、ビヨヨーンと軽やかに推されてくるWさんに対し、私は力んでしまってゴンと受けてしまっていた、といった割と原因が分かりやすい状況でした。
とにかく当日は、いろんな方々が、入れ代わり立ち代わり相手をして下さり、私の混乱は深まって行ったのでした(笑)。
五条悟は、よく存じ上げませんが、ブルース・リーはお馴染みの存在でした。
Don‘t think. Feel!
改めて、この教えを噛みしめる必要がありますね!
Uさん、混乱、楽しんでますねー。
混乱もまた陰陽、避けて通れぬ道ですし、そこを通り過ぎないと、あさっぺらい太極拳のまま進歩しませんので、思う存分混乱してくださいませ!
そのうちスカッと爽やかにわかるようになりますよ!たぶん。