「気」の考察

勁について、5連発で考察してきましたが、いただいたコメントに「気」のことが書かれていました。

太極拳と言えば、やはり「気」の武術、というイメージが強く、「勁」とはなんぞや、と考える時、「気」とセットに(あるいは混同)してしまい、いらぬ神秘的な効果を期待しすぎていたことが、理解の妨げになっていたのではないかと、本シリーズを読んで思った次第です。

私の返信。(一部修正)

「気」については、まだ語れるほどの気づきはないのですが、他武術の「気」の概念と混同した人が混乱を招いているのではなかろうか? と考えております。以前、合気柔術の道場にお邪魔した時、「気」だと説明を受けたものが、まんま「太極拳の勁」に当てはまるものだ気づきました。太極拳で言う「気」と、合気柔術で言う「気」は別物だと確信したのですが、一緒くたにすると混乱しますね。
太極拳の「気」については、もっと広い概念のように思います。私程度のレベルの者は、「気」についてアレコレ考えてもしょうがないと思っておりまして、自然な気づきを待っている状況です。

「気」に関する考察は、これまでにも何度かブログに書いてきましたが、いまだに私自身、よくわかりません。

老子の道徳経や、太極拳の解説書や、いろいろ気に関する文献も読みましたが、それでもピンときません。

「掌を向かい合わせると、あたたかくなる、これが気だ!」といわれれば、「それは自分の体温を自分で感じてるだけや」と思ってしまいますし、「気でスプーンが曲がる!」と言われれば、「それは物理的な力。私は2重巻きにできた」と言いたくなります。

太極拳を「気の武術」だとも、全然思えません。

だいたい、気がどうのこうの言っている人ほど、手を合わせれば拙力を出しまくってくるし、太極拳の正しい知識のない人ほど、オカルトっぽいことを語って人を煙に巻こうとするし、地道な努力をできない人が、言い訳のために良くわからん世界を持ち出しているんじゃないかとさえ思ってしまいます。

ですので私は、「気とは?」と聞かれたら「よくわかりません」と答えることにしています。

「えっ、わからんの?」と期待外れのような、見下したような態度を示されることもなきにしもあらずですが、心の中で「あんたかてわかってへんやろ」と反論しております。

得意げに語ってくれる人もありますが、その浅っぺらさにはウンザリします。

「ようわからんとは言ったが、あんたよりは知ってるで」みたいな…。

「勁」に関しては、ある程度は理屈で説明できるのです。それを感じて実際に運用するためには、鍛錬を重ねていくしかないですが。

「気」に関しては、いくら言葉を探しても、ピンときません。それこそ感覚の世界、フィーリングの世界、感じるしかないんじゃないかなあ~という気もします。

感じることはあります。

旅先の山の中で套路を打って「気持ちいい~」という感覚は、気を感じているのかもしれませんね。

静かに笑って立っているだけなのに「スゴイ圧力!」と感じたり、見えなくても「奴がそこにいる!」とわかるのも、気の作用かもしれません。

落ち着いているとか、焦っているとか、気の乱れと関係する感じは確かにします。

元気溌剌と、しょんぼり落ち込みでは、気の性質や量は違うと思います。

しかし、どういうメカニズムで気が体に作用するのか、相手に影響を及ぼすのか、場の雰囲気を変えるのか、言葉、理屈では説明しがたいです。

メカニズムを言語化できませんので、どうやったら気を強化できるとか、武術に応用するとかもわかりません。

今後の鍛錬により私のレベルがあがっていけば、もしかすると、突然閃いて言葉になって説明できるようになるのかもしれませんが、今のところ、その気配はないです。

あっ、気配というのも、気にまつわる単語だなあ。

ということで、自然にわかるまで、「気」は考えらん方がいい!と結論づけたいと思います。今のところ。

コメント

  1. 吉川 和博 より:

    今回の『気』というのは難しいテーマですね。私は深く考えたことがありませんが、『大周天』『小周天』『走火入魔』等は太極拳関連の書籍によく出てくるワードだと思います。
    「気血が乱れ走火入魔に陥る」とか怖いな〜というイメージが強いです。

    ドラゴンさんが仰った、『旅先の山の中で套路を打って「気持ちいい~」という感覚は、気を感じているのかもしれませんね。』

    この「気持ちいい〜」感覚が大事なんではないでしょうか?
    『気』を『気』として追い求めてもなかなか手にすることはできないものだと思います。

    なのでドラゴンさんの意見に賛成です。
    自然に自得するまで考えない方がいいと思いますねー

    私の経験を少し。五年ほど前に原因不明の『目眩』に悩まされていました。
    それまでこれといった大病も患ったことはなく、そこそこ健康体だったのですが、思い当たるフシがなく半年以上悩まされました。

    ところが先日、ドラゴンさんお勧めの安田先生の本を読んでいてハタと気づきました。
    本には、『太極拳は夜中に練習してはならない』と書いてあり、そういえば『目眩』を患う前は夜中に一生懸命『某太極拳』を練習していたことを思い出しました。

    「原因はこれだ!」と確信しましたね(笑)
    知らぬ間に『走火入魔』に陥っていましたー

    知らんけど…

    • パパだよ より:

      吉川さん、ご賛同ありがとうございます!

      追い求めるもんでもないなーと思いますね。

      夜中の太極拳で体調不良、こわいですねー。

      「カンフーガール」という小説の中にも、気がおかしくなっている武術家が、恐怖心から夜中に目が覚めて、ゆっくり套路をする、という話が出てきます。

      太極拳は好きですが、そんな風にはなりたくないなーと思った次第です。