術にハマる

D公園で久しぶりにUさんに会いまして、推手の練習をご一緒しました。

搭手を合わせるなりUさんから、「なんか怖い」という感想をいただきました。

え、なんで? 別に殺気を放ってるつもりはないし、ニュートラルな気分やけどなあ~と思ったのですけど、後から考えて思い当たることがありました。

それはつい先日、安田先生から指導を受けて、若干意識が変わったところがあるのです。

套路でも推手でも、聴勁センサーの一番敏感なところは、これまで指や手の甲だったのですけど、ちょっと変わりました。

どこかといえば、肘のあたりです。ピンポイントではなくてもう少し広い範囲なので、肱といいましょうか。末端から胴体に近いところに、センサーとか作用点とか、いろいろなものが移った感じです。

体はより寸胴みたいになってきたイメージがあります。隙が少なくなりました。

たまに安田先生が手を合わせてくれる時、私も「怖い」と思います。

殺気出てる! 怒っている! というのではなくて、動き出したら巻き込まれて大怪我や死亡の恐れがある危険な工作機械が、カバーなしのむき出しになっていて、それに近寄って、おそるおそるスイッチを入れる、みたいな気分になるのです。

機械は無機質で、感情はないですが、怖いですよねー。工場の事故で指が飛んだとか、頭を挟まれて死んだとかあるじゃないですか。それに近い感じ。

私が安田先生に感じたイメージを、Uさんは私に感じたのでしょうか?

ということは、私はまた一歩達人に近づいたわけで、嬉しい!

Uさんとの推手の練習では、ほぼ一方的に、Uさんが飛んでいったり、ひっくり返ったりでした。

私は、今のは套路の何の動作ですよーとか言いながら、ただ套路の形通りに動いているだけですが、面白いようにスコンスコンと、かかってくれます。

これはもはや、すっかり術中にハマっておるな!

私も安田先生やN先生と手を合わせるとき、術中に陥っている感じがします。何をしたって、やられっぱなし。

術中にハマっているというのは、こちらもちゃんと太極拳の要諦に沿って動けているということです。体が自動的に反応して、太極拳的に動けているのです。

囲碁や詰将棋でいえば、定石で詰まれているかんじですかね。

術にハマるUさんは、実力があるってことです。全然さっぱりな人だと、こうはなりません。

将棋で言えば「桂馬はそこに打てません!」みたいなかんじ?

キレイに術にハマれない人が、闇雲に突っかかっていくと、たぶん怪我します。それこそ機械操作を誤り死亡事故、みたいなものでしょう。

素直じゃない人、我が強い人は、なかなか術にハマってくれないですね。強引だろうが、なんとか勝ちたい、みたいな。いつもどこか痛いといっているのは、そんな人です。

メンツというか、マウント取りたい気持ちが優先して、深遠なる太極の世界に入っていけない、小さな自分の世界にこだわって上達しない、達人への道には踏み出せない…どちらかといえば、そんな人の方が多いですね。

どんくさくて気弱でも、素直で真面目で根気のある人が、太極拳は上達します。

もと金メダル常連の年上の人に、私が上から目線で言うのも失礼な話ですが、Uさんはその点、ステキです。まだまだもっと上達されることでありましょう。

コメント

  1. U より:

    こんばんは、Uです。
    日曜日は、推手をたっぷりご指導頂き、ありがとうございました!
    取っ掛かり、搭手を合わせた際、記憶の中の感覚とのずれを感じ、「あれ?」と思った時にはすでに崩されており、思わず後退りしてしまいました。
    いつか体験させて頂いたような、「圧を上げられている」という感触ではなく、何か別の種類の得体のしれない「圧」で崩されたような気がして、思わず口をついて出てきた言葉が「なんか怖い」だった訳です。
    その正体が。本記事に書かれている、パパだよ さんの「意識の変化」に起因するものであって、私がその事に皮膚感覚を通して感じ取った、としたのであれば、割とすごいことではないかと思うのです、しらんけど。

    ついでに申し添えておくと、恐怖心を覚えていたのは、初めのうちだけで、慣れてきたらその「圧」を受けて崩されるのを楽しんでおりました。力で抵抗することは危険だ!とは感じていたので、捌けないと判断したら、素直に食らっておこう思った結果、飛ばされたり、ひっくり返されたりしまくっていた、ということです。
    皆さんが帰られた後も、1時間ぐらいお相手して頂き、その間ほぼ一方的にやられっぱなしでしたが、特に疲れるわけでもなく、むしろだんだん気持が乗ってきて、より楽しんでいた感じでした。

    次回また、美味しく食らわせて頂きたく存じます!

    • パパだよ より:

      U様、楽しんでいただけたようで、なによりです。
      私も、楽しいひと時でした。食らっても、食らわせても楽しいのが太極拳ですね!