太極拳の推手をしているときに、R氏が聞いてこられたのです。
「もっと足首を柔らかくしないといけないのですね?」と。
え? 足首固いかなあ? と思って、しゃがんでみてもらうと、踵をついたまましゃがめて、普通に柔らかいです。
いや、十分に柔らかいですよ。と答えました。
なんでそんなところに意識されたのか想像するに、たぶん誰かに、そう言われたのでしょう。
「足首が固い」ではなく「もっと足首を柔らかく使え」だったのかもしれません。
しかし、言われた側は、自分の足首は固い、もっと柔らかくせねば、みたいに解釈してしまったのですね。
足首を柔らかく使うなんて、私は意識したこともないです。
太極拳では、こういったよろしくない意識をさせる指導法をよく見かけます。
押されてもふらつかないように、しっかり立たないといけないとか、起勢では相手を推し返せばならないとか、丹田をぐりぐり動かせとか、肩の力を抜けとか、呼吸は逆腹式呼吸とか…
そういうのは、長年の正しい修練の結果、自然とそうなるものであり、初心者ができていなくても、なんの問題もない話です。
問題のないことに意識を向け、こだわりを持つと、練習すればするほど下手になっていきます。
そんな人をたくさん見ています。
私も自治会でやっている自分の教室で、前にうっかり変な指導をして、生徒さんに、みょうちくりんな癖がついた例がありまして、その修正がなかなか大変です。反省。
関節が固いとか、筋肉量が少ないとか、身体的、フィジカル面の問題があるなら、柔軟体操をしましょうとか、練習時間を増やしましょうとか、簡単な解決法は提案できますが、意識の面、メンタルの面は、その事象を指摘したところで、よくはなりません。
おとなしい人に、元気出せというようなものです。
指導には工夫が必要です。
この、問題のないことにこだわって、やればやるほど狂うという事象は、太極拳のみならず、世間に多く見かけられるような気がする今日この頃。
血圧が平均より少し高いからアナタは病気、薬を飲みましょうとか、お宅のお子さんは他の子よりソワソワしているから発達障害、特別クラスへとか。
世界的時流でもそうです。二酸化炭素が増えているから電気自動車と太陽光発電に変えましょうとか、新型コロナは終わっているのに、謎のワクチンを打ち続け、マスクは外せないとか。
冷静に眺めて考えて、変だよねえと素直に感じ取れる心が必要です。
鳥の目、虫の目、魚の目という教えもあります。
上空から大きくマクロに物事をとらえ、ミクロに分析し、泳ぎながら流れを判断せよという教えです。
虫の目しか持ち合わせていないと、おかしな方向に進んでしまいますね。
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