太極拳の間合い

簡化二十四式太極拳を習っていると、変だなーと思うところがたくさんあるのです。

たとえば、搂膝拗歩。

格闘系の人の解説動画では、いろいろな可能性を説明されていますが、私の通う高齢者クラブ的教室では、膝の前を左手で払って、右掌で推す、と教えています。

膝の前を払うのは、相手の蹴りを腕で払っているという説明でありますが、そりゃ厳しいでしょう、と思ってしまいます。

極真のローキックでなくとも、素人の蹴りでも、よけられますまい。

一度放たれた蹴りを、手で防ぐというのは、なかなか大変です。

少林寺拳法修業時代は、十字受けという、回し蹴りを両手で止めて、蹴り返すという技をさんざん練習しましたが、相手が正確に蹴ってくれないと、受けられませんでした。タイミングをずらされても受けられないし、ちゃんと受けても、前腕は青痣だらけでした。(脛もデコボコ)

そういう練習を繰り返す日々で、飛んでくる足でも拳でも、空中で受け止めるというのは、ちょっと現実的ではないなあ、少なくとも、どんくさい私には無理だ、と思った次第です。

飛んでくるミサイルを、大気圏突入後に迎撃するようなもんだ。

で、太極拳の場合、離れたところから飛んでくる攻撃を、どうこうしようという発想ではないはず、と思うのです。

発射前に抑えてしまう、というのが、あるべき戦法でしょう。

間合いが遠いと、それは不可能です。念力で金縛りにしてしまうという、超ハイレベルな人なら別ですが、普通、離れた相手の体に干渉することはできません。

最初から密着しているという太極拳でこそ有効な発想でありましょう。密着していれば、発射の兆候も分かりやすいし、加速前に抑えられます。

密着しているというイメージが、こちらの教室の皆様には、たぶん、ないんです。套路をしていても、仮想敵はおそらく、だいぶん遠いです。

私自身も、少林寺拳法を練習している頃は、わかっておりませんでした。カンフー映画でも、そこまで密着して戦うシーンって、ありませんものね。激しいパンチキックの応酬がなく、ひっついたまま何をやってるんだかよく見えず、地味な発勁で崩れ落ちるシーンなんて、映画映えしないですものね。だから、太極拳の映画って、あんまりないんでしょう。

今の私は、推手にもなじみ、安田先生にも学んで、套路のイメージも随分変わりました。仮想敵の顔は至近距離に引っ付いていて、息が臭く、手足は粘着して巻き付いているイメージです。(普段は、あまり敵を想定はしていませんけど)

間合いのイメージを書き換えることができれば、ご同輩たちの二十四式太極拳も、ずいぶんよくなるんじゃないかなーと思ったりしますが、足をピーンと伸ばすような表演とは整合性が取れなくなるので、混乱するかも。

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