捨己従人

捨己従人(しゃきじゅうじん)とは、太極拳の用語です。

これはなかなか良い言葉だと思うのです。

武術的な意味合いとしては、自分から攻撃に走ったり、ふんばって抵抗したりという、ワガママな心を捨てて、相手に従うようにして、ただ正しい動きをしておれば、命のやり取りでも負けない、相手の方が自滅する、というような意味合いですね。

太極拳の戦法を教える言葉です。

しかしこれは、もう少し拡大解釈できると思うのです。

武術シーンに限定せず、人間の生き方として考えてみると、己のちっぽけな欲望を捨てて、世のため人のために生きよ、という教えのようにも思えてきます。

人の喜びが我が喜びだと思えれば、自分一人だけの欲望だけでなく、地球上に70億以上もある喜びが、自分のものになります。お得です。

一日24時間、人生およそ100年の自分の時間、すなわち生命を、一つの喜びのためだけに使うより、70億のために使えば、喜びも70億倍。

まあ、70億が大きすぎれば、日本国民1億2千万くらいでも、それでも大きければ、自分の付き合いの範囲、フェイスブックの友達くらいの数でもいいかと思いますが、俺だけのため、私だけのため、自分ファーストという心を捨てて、家族親戚友人知人商売相手にお客様隣近所のために、自分の時間を使うと、それだけお得、という教えになるんじゃなかろうか。

命の使い方ですね。使命というものです。

目先は、費用ばかりかかって、収益にならず、ボランティアか? メリットがない! みたいなことになるかもしれませんが、長い目で見れば、人生、勝ち組か負け組かと考えたとき、結局は、死ぬときまでに、どれだけ喜びがあったか、幸せを感じたか、その量と質によると思うのです。

一つの欲望達成の人生より、70億の喜びを、そっくりそのまま自分の中で感じられれば、そのほうがはるかに幸せでありましょう。

「人に従う」という字面からは、なんだか召使いみたいな印象もありますが、「人の喜びに合わせる」というふうに解釈すれば、とっても幸せな言葉になるんじゃないかと思った次第です。

でもまあ、太極拳としては、相手に合わせつつ、やっつける、って感じです。

 

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