陳式太極拳の足の裏の重心は、踵にあるのが正しいと教えられ、衝撃を受けました。
衝撃だったのですけど、しかし、これで、今までなんとなく腑に落ちていなかった部分が、スッキリ解消した気分です。
実は、踵に重心を持ってくるという習慣は以前よりあったのですが、これは私の悪癖であると考えて、矯正しようとしていたのです。踵に体重が乗っていると、推手の時に、押されて後ろにひっくり返りそうになりますから。
それで、重心は、足の裏の真ん中あたり(湧泉穴あたり)にあるべきだろうと思ってました。足の真ん中に体重を載せていれば、安定するといえば、安定します。
しかし、足裏の真ん中重心を意識した足と腰の位置ですと、尾骶骨を丸める太極拳の姿勢をとろうとすると、なんだか苦しいのです。おしりが引っ込んで、腹を突き出すような恰好になります。これはおかしい、背骨が弓のようになるのが正しいはず、と思って、そのような姿勢をとろうとすると、こんどはなんだか、前のめりになります。
前のめりにならないようにすると、今度は膝がつま先より前に出てしまいます。特に、腰を落とした低い姿勢でやると、このような症状が出てきます。膝がつま先より前に出てはダメとは、これまでにも何度も指導されていることです。
んで、どっちつかずの中くらいに妥協しておりますと、なんだか足運びがもたついてしまいます。へんだなあ、まだまだ修行が足りん! と思っておりました。
が、これが踵に重心を持ってくるようにすると、万事解決。
安定しているかというと、なんだか不安定で、つま先が浮いてきそうになりますが、そこは、指で地面を掴む意識で、耐えます。(靴を履いておりますので、本当に地面を掴むわけではありません。)
こうすると尾骶骨を巻いて、背中の骨を弓のようにしやすくなります。低く構えても、膝が出ません。太極拳らしい姿勢になります。
踵重心は、後ろに引っくりやすいような気がしますが、それでいいんだという話です。踵を支点にして、回転しやすく、押して来る相手を、後ろに放り投げやすくなります。推手では、はじめのうちは、おそらく負けっぱなしでしょう、でもある時、とつぜん負けなくなります、というふうに教えていただきました。
まだ、推手で試してないのですが、電車の中で立ってみたとき、湧泉穴に重心を置くより、踵重心のほうが、揺れに耐えやすかったです。(耐えるというか流すというか)
ちなみに、教えてくれた先生は、若い頃より陳家溝に住み込んで長年修行された日本人の先生です。
実は、先生には学生時代に京都の武術教室で陳式太極拳の老架式を教えてもらっていました。当時は先生というポジションではなかったように思いますが、ずば抜けて上手な人でして、もうひとり、やはり陳家溝に修行に行った先生(こちらも当時は先生ではなかったような)と、お二人には、よく教えていただきました。練習後はよく、飲みにも行っておりました。(はて、20才を越えていただろうか?)
もしかすると、悪癖だと思っていた踵に重心を乗せる癖は、当時、すでに学んでいたのかもしれません。
縁あって、25年ほどたった今日、ふたたび教えてもらうことができたのです。人の縁って不思議。
私は、地元の教室では、楊式と陳式の新架式を学んでおりますけど、せっかくなので当時学んでいた陳式老架式の復習をしてもらいました。套路のはじめの部分を見ていただいたところ、今学んでいる新架式は、そこそこできているけど、老架式は「かなりあやふやである」ということで、立ち方から、起勢の手の上げ方、拳の握り方など、細かく教えていただいた次第です。いやはや、まったく適当でお座なりであったと痛感。
昔学んだとはいえ、20年も、一人練習しかしていないと、ずいぶん狂ってしまうものです。いちど、完全に身に着けたと言えるくらい学べば、そうでもないのかもしれませんが、3年やそこら習ったくらいで、一人練習に移るのは、危険ですね。
長年、景気よくバシンバシンと鳴らし続けていた震脚も、ちゃんとできていなかったようで、しばらくは静かにやってみましょうと指導いただきました。震脚を静かに降ろすというのは、なんだか物足りない感じですが、深く学ぶ良いチャンスです。
全く初心に帰って学び直すことにいたします。
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