特別講師になりました

特別講師と呼ばれたわけでも委任状をもらったわけでもなく、自分で勝手に格付けしただけですが、よその教室に指導しに行ってきました。

推手道場で一緒に練習しているINさん(女性)が最近、教室を受け持つことになったそうで、うまく教える自信がない、一度きてほしいと言われてまして「行けたら行きますわあ」と答えていたのです。

教室の開催日時が、私が家族で通っている教室とモロかぶりで、なかなか行けなかったのですが、この週、私の方がお休みだったので、「いきましょか?」と声をかけた次第。

INさんも家庭の事情で、この日は休講の予定だったらしいのですが、陳式の先生が来るなら!と生徒さんが希望され、本来の先生不在、私が講師として開催実現に至りました。

教室は車で1時間弱、同じ大阪府内でもあまり馴染みのない、街灯が少なくて薄暗い地域でした。安田先生はこんな風に指導に行かれてるんやなあ、全国あちこち呼ばれて面白いやろうなあ、なんて考えながら行きました。

生徒さんは3人でした。うちの自治会教室同様、妙齢女性ばかりです。本当は中学生女子もいて、その子への指導に自信がないという話だったのですが、中学生は、休講を通知した時点で別の予定を入れてしまったとのことで、お休み。あら、残念。

こちらの教室では二十四式だけ教えていて、他は全く知らないと聞きましたので、自己紹介代わりにまず一発、老架式一路を披露しました。

おおむね二十四式と共通する動作をチョイスして、3分くらい表演しました。自選套路をやるのは初めてですけど、行き当たりばったりでもうまいこといくもんです。あらかじめ考えておかなくてもできるなあ。大会の時も、前の選手を見てから即席でやることにしよう。どこが得意とか苦手とか、ないもんね。

それから皆さんに二十四式をやってもらいました。

予想以上に上手でした。私が家族で通っている教室の皆さんより、ずっと上手です。INさん、指導頑張ってるのやなあ。

皆さんの動作を見て、指導内容を決めました。

「陳式に興味を持っておられるでしょうが、今日一日だけ陳式の動作を覚えたところで何の意味もありません。それよりも、昔から伝えてこられた伝統拳のエッセンスを、皆さんが習っておられる二十四式太極拳に練り込んでみましょう。表演や検定用に習う内容とは異なりますが、本来の太極拳のテイストを味わってもらえればと思います」と宣言して、レッスンを始めました。

持ち時間は2時間弱。

地球の力に逆らわない自然な立ち方と歩き方の練習、棒を使って全身が統合して動く感覚の体験、纏絲の概念と感覚の体験、推手というほどでもないですが相対になって勁が行ったり来たりする感覚の体験、最後に、表演用でない武術的エッセンスの入った二十四式の練習、これだけ詰め込みました。

ここがいつも上手くできない、という質問があって、指導内容のいいヒントになりました。

みなさん、本当に二十四式の表層的な知識しかなくて、逆に素直でよかったです。インチキなウンチク親父はいないのは本当にやりやすい。

皆様の脳みそをパラダイムシフトで掻き回せた実感があります。閃きのランプが、パカパカ光っているようでした。相当に太極拳への概念が変わったはず。

「頭が混乱してます!」との感想には「理解できなくてもいいです。一度体感しておけば、あとからわかってきます」と答えました。

「狭い室内でも毎日できる練習方法を教えて!」という前向きでグッドな質問には「站樁功も基本功もできるし、套路もできます」と答えました。

「套路は無理では?」という期待通りの質問に「牛一頭が寝れる広さがあれば練習するという格言がありまして、日本なら畳一畳分あれば練習できるのです」と答えて実演してみました。

白鶴亮翅を、新架式みたいに前進しながらやったりして「このようになんぼでも自由自在に動けるんですよ!」とさらなる混乱を与えておきました。

表演のための形通りの練習だけでは世界が狭い、もったいない、太極拳はもっと広大で深淵なんだとわかってもらえたと思います。

なかなかの手応えを感じました。特別講師として、まあまあ優秀だと自画自賛しときます。また中学生が参加している時もお伺いできれば、違ったアプローチができて面白そうです。

というか、家族で通っているナンチャッテ太極拳教室の方こそちゃんと教えてあげたいですけど、指導歴の浅いINさんと違って、プライド高い先生が仕切っていますから難しいですね。

コメント