ずいぶん昔、太極拳を習い始めた大学生の頃、大学の図書館で読んだのが陳孺性著「太極拳の科学」でした。
テキストづくりの為に、色々と資料を読み込んでいる最近の私です。
昔々に読んで、面白かったような記憶のあるこの本を、メルカリで買って、読み直してみました。
30年ぶりに読んだ感想。
面白い!
陳家溝小架式の陳沛山先生の6600円のテキストは、いかにも家元が書いたという感じで、詳しくて固くて難しいですが、シンガポール生まれという陳孺性先生の本は、至るところにジョークが散りばめてあって、クスクス笑いながら、スラスラっと読めます。
あまりに日本語のジョークが巧みで、ほんまに外国の人??と疑問です。
そして、読んでいて感じました。
私の書いているこのブログ、相当に陳孺性先生の影響を受けています。
世にはびこる迷信、インチキを、正してやろうという精神、誇大妄想を現実に引き戻してやろうという良心を、いくばくか受け継いだような気がします。
最初に読んだ太極拳の本が、この本だったからこそ、私は中国武術というファンタジーに陥ることもなく、また、少林寺拳法の応用でできるだろうというような短絡的思考に嵌まることもなく、真面目に太極拳に取り組めたのだと思います。
学生時分、何度も読み返したんでしょうね。ジョークの部分は、よく覚えておりました。
理論や技巧の部分は、当時あんまりわかっていなかったみたいで、へー、こんな事書いてたのかーと初めて知ったような新鮮さがありました。
その上で、ちょっと一面的で、浅いな、という感想を持ちました。
勁や纏絲の解釈や、戦闘理論とかの部分です。
この点、著者自身も、絶対ではない、考え方の差異、正反対の見解が生じるのは当然だと、ことわりを入れられています。
私が現在、安田先生から学んでいることは、もっと深いし、多角的です。
この御本、面白くはありましたが、いまさら参考にするほどでもなかったな、というのが感想です。
太極拳を学びはじめの人が読めば、良い刺激にはなりそうですね。理論については、こんな考え方もあるのやなあ、程度に受け取っておけばよいかと思います。
陳孺性先生は、自分独自の体験や研究から、本に書かれている理論に行き着かれたような気がします。おそらく、正統な老師から集中的には学んでないんじゃないでしょうか。多くの武術を学ばれて、総合的な視点から、太極拳を理解されているような気がします。
他の武術との対比が多いんですよね。
私は、学んだ陳式太極拳を、素直に練習して体感しているだけです。実戦で試した経験もありません。
ただ、何百年も口伝で伝えられてきたのであろう秘伝を、そのまま受け止めている気はしております。奥深すぎて、まだまだ到底全容は受け入れきれてはおりませんが、陳孺性先生の本の内容よりかは、深いところを見ているだろうとは感じます。
でも、陳孺性はあかん、インチキ!とは全然思いません。
この本に載っている陳孺性先生の写真を見ると、どうも30歳から40歳くらいに見えます。今の私より、ずっと若い!
おそらく、まだまだ発展途中での発表でありましょう。
私が30、40の頃は、形ばかりの練習で、全然わかっていませんでしたものね。
この年令で、これだけの理論を確立されているわけですから、その後も研究と修業を続けておられたとしたら、もっとブラッシュアップされ、洗練され、深化されているはず。
今は全然お名前を聞きません。グーグル検索しても、昔の書籍の情報しかでてきません。
日本の武術業界にはかかわっておられないのかもしれませんね。巻末に、インドネシア在住と書いてありますし。
今はどのように教えておられるのか、ちょっと見てみたいような気もします。
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