百田尚樹「地上最強の男」感想・レビュー

アメリカの歴代ヘビー級チャンピオンの記録小説のような「地上最強の男」は、ずいぶん読むのに時間がかかりました。

先に読んだボクシング小説「ボックス!」は、ストーリーが面白く、さささっと読めましたが、「地上最強の男」は、そのような物語、お話とは趣が違っておりまして、いちいち日付、年齢、体重、興行収益、賞金額というような数字がいっぱい並びまして、登場人物は似たような名前が多くて、頭がこんがらがるんです。

古い映像をYouTubeで見れるもんですから、ますます読むのに時間がかかってしまいます。マイルスデイビスによる映画ジャックジョンソンのサントラも長かったし。

序章ではモハメド・アリやマイク・タイソンの名前が出てきますが、はじめの方のベアナックル時代は南北戦争とかのころです。ボクシングとレスリングの境目があいまいで、ルールもあいまい。登場するボクサーは知らない名前ばかり。

時代が進むと、グローブをつけるようになり、ルールができて、興業の在り方も変化していき、ボクシングのスタイルも変わり、ギャングとのかかわりができてきます。ドイツ人ボクサーはナチスのボクサーと呼ばれ、徴兵を拒否した黒人のモハメド・アリは、時代の象徴のようになって社会を変えるほどの影響力を持ちます。

アメリカの変化とともに生きていたのが、ヘビー級チャンピオンだったのですね。

そういう100年を超える壮大なドラマが、数字とともに淡々と綴られていきますが、メインとなるのはやはりモハメド・アリです。百田先生、よっぽど好きやったのやなあ。

私は、モハメッド・アリが現役で活躍していたのを見ていないのです。猪木とアリの対戦が1976年ですから、私が6歳のとき。ぜんぜん知らなかったし、関心もなかったです。

私に知る世界最強の男は、マイク・タイソンでありまして、テレビでよく見ておりました。

カン!とゴングが鳴って、数秒でノックアウトで試合終了、あとの枠は過去の映像を流して、タイソンの凄さを振り返る、というようなことが長く続いておりました。

すげーやつやなあと思っておりましたが、この本によれば、マイクタイソンの活躍したころは、すでにヘビー級チャンピオンをスーパースターとした時代ではなかったということです。

ジャックデンプシー、ジョールイス、モハメドアリの時代こそが、ボクシングが輝いていた時代だったのですね。

たしかに、マイクタイソンより、アイルトンセナの方が好きだったかも。時代はF1でした。

そのF1も今はパッとしませんね。

これも諸行無常、盛者必衰というものでありましょう。

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