推手道場に行くと、いつもSさんが、「教えてちょうだい!」とやってこられます。
ほかにも先生方がおられるのに、いつも私なのです。
N先生と練習していても、ちょっとした隙を見つけては、声をかけられます。
Sさんは、たぶん70歳を超えていると思うのですが、とっても、あつかましい…じゃなくて、たくましいです。典型的な大阪のおばちゃんです。
1年ほど前から来られるようになって、ぼちぼちご指導させてもらっております。
最初は、掤勁もないし、体重移動もできないし、なかなかキビシイなあと思っておりましたが、だんだん上手になってこられました。
体重移動がむつかしければ、片足でやってみて! といったような私の工夫の成果もあります。
その日言ったことは、翌週には忘れてしまいますが、それでも薄く薄く重ね塗り効果ですね。
この頃は、私とN先生がやっているような自由な推手がしたいと言いはりますので、それなら、これまでの推手に対する既成概念をとっぱらってもらおうと思いました。
顔を叩きに行くから避けてくださいよ、とか、お腹も叩きますよ、とか、足でも蹴っ飛ばしますから、止めてくださいよ、とか、どんどんパラダイムシフトを感じてもらいました。
そもそも武術は、殴り合いどつき合いです。それを力の弱い者、どんくさい人でも負けないように、至近距離でねばりつくという高度な技術に、何百年もかけて昇華させたものが太極拳です。推手は、その練習方法です。
推手を、手を合わせてグルグル回して、気だの勁だのを養う練習だと思っておられる人もおられますが、推手は格闘訓練です。
殴られないようにと思えば、掤勁を弱めることはなくなります。蹴られると思えば、体重移動なんて悠長に考えておられません。
一気にセンスが向上します。
蹴りを止めようとすれば、足同士が当たります。当たっても、自分は痛くなくて相手は痛いという足の動かし方とかも、練習してみました。さらに擦脚や蹬脚の使用例も伝えました。
Sさんは、おもしろーい! と喜んでくれました。
こんな練習ばかりだと、雑な動きになってしまう恐れもありますが、意味も分からず、グルグル回しているだけというのも、進歩がありません。
たまには、脳みそに刺激を与え、視野を広げ、本質を知るというのも、上達の役に立つのではないかなと、思った次第です。
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