(写真のメーターは巻き戻しておりません。)
その昔、中古車屋に並ぶクルマは、38,000km台が多かったのです。嘘のサンパチ。
メーターがクリクリと巻き戻されていたのですね。これはれっきとした詐欺罪です。
3万8千kmというのは、中古車としてちょうどいい感じの走行距離です。少なすぎもせず、多くもなく。
そして、人間が、作為的にデタラメな数を並べようとすると、無意識のうちに3と8を選ぶもので、自然と3万8千kmが多くなったのでありましょう。
私は、自分でやったことはありませんが、巻き戻し作業を目の前で見たことがあります。
メーターパネルの下に工具を入れ、メーターをごそっと引き出し、カバーを外して、タコ焼きを回す棒で、メーターの万の部位をクリクリっと、押していました。
あっという間にできあがり。
整備手帳は処分し、エンジンルームやドアのスキマに貼ってあるオイル交換のシールを剥がし、ガソリンの蓋の内側もチェックして証拠隠滅です。
あとはクルマをキレイに洗って、程度良好なクルマのできあがり。
これがアナログメーターの時代の手口でした。
デジタルになると、その程度の小技ではゴマカシができなくなりますが、それでもメーター戻しはありました。
正体不明の戻し専門業者があったのです。どこで広告を出してたのか知りませんが、郵便局留めでメーターを送ると、お好みの走行距離になって返ってきます。特殊な機械を使っていたのでありましょう。
目次
走行距離の記録でメーター改ざん防止
オークションでの車の取引が一般的になってくると、一度出品された車の走行距離が記録されるようになりました。
オンラインでデータ共有化が進み、東京のオークションで売れた10万kmの車が、大阪のオークションに38,000kmで出品されても、すぐに分かってしまうようになりました。
これである程度、メーター戻し被害はマシになったようですが、最初のオークションに出品するまでに戻してしまえば、わかりません。
民間業者の対策に続いて、お上も動くようになり、陸運局で車検を受けたら、車検証に走行距離が記載されるようになりました。
しかし、これも、メーターの故障だとかなんとか理屈をつけて車検証の記録をも改ざんしてしまう悪徳業者もいたようです。
メーター戻しの見分け方
メーター戻し車の見分け方と言いますと、経験による勘が一番の頼りです。毎日毎日、中古車ばっかり触っていると自然とわかるようになるんです。
シートのヘタリ具合、ハンドルやペダルの減り具合、ボンネットルームの汚れ具合(洗ってあっても、なんとなく分かる)、走行時のミッションのガタツキ、そんなところです。
数字じゃなくって、五感と第六感を信じて真実を見据えるのです。買う前に、よーく見て触って乗って、不審な車は避けましょう。
まあ、一般のユーザーは、見ても乗っても、わかんないと思いますので、整備士のお友達と一緒に車を見に行くのが良いでしょう。
おかしいと思っても、メーター戻しの証拠は、まず出てきませんので、買ってしまってからクレームのつけようがないです。トコトン裁判にまで持ち込むなら、前オーナーまで引っ張り出さねばならぬでしょう。
そこまでやるのは現実的じゃないです。
胡散臭い店でクルマを買わないのが、一番の防衛策です。メーター戻し車を扱っているような店は、店の雰囲気も胡散臭いし、社長も店員もみんな胡散臭い顔をしています。
なんかこの店、イヤッ!と思ったら、良さげな車があっても、やめときましょう。
ニュージーランドのメーター戻し事件
日本の中古車は、同じ左側通行のニュージーランドに人気があり、よく輸出されていました。
20年ほど前の話ではありますが、その、日本側の輸出業者がメーター戻しをしており、バレて、何十台も積んだ船が入港拒否になったという事件がありました。
日本語じゃわからんだろうと、得意気にペラペラしゃべってたのが、こっそり撮影されていて、向こうのテレビ番組で大暴露されたそうです。
日本の信用ガタ落ち。
不正というのはバレるものです。小銭を稼ぐために小狡いことをして、国家と民族の誇りに傷をつけるような真似はしてはなりませぬ。
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