小手先でなく基本を大事にという話

推手相手から「こんな時はどうしたらいいの?」と聞かれることが良くあります。

以前の私は、「体をこっちに向ければ…」とか「股関節を緩めて…」とか「体重移動が…」とか「纏絲が…」とか、「ポンがリーでジーはアンは…」みたいなことを言うておりました。

私自身が、そういうことを意識していたからだと思います。

しかしこの頃は、言うことが変わってきたなあーと気づきました。

「どうしたらいいの?」と聞かれたら、

「どうもしません。相手に合わせて、基本通りに動くだけ。頭は上、お腹は下、目は遠く、耳は後ろ、自然に。」というかんじに答えてしまいます。

これって、私が安田先生に言われたこと、ほぼそのままだなあ。

さらに説明するときは、いったん手を放して、基本動作を確認してもらったりします。どうしたらいい?と聞く人は、だいたい基本動作ができていないことが多いです。基本ができていないのに、枝葉末節小手先テクニックに気が行ってしまうのですね。

そして、実際の手合わせより、屁理屈みたいなのを知りたがる人が多いようにも思います。

ごちゃごちゃ考えていないで、とりあえず手を合わせて、負け続けてくださいな、と言ってしまいました。

私自身が負け続けてきてよかったな、と思っているのです。負けるというのは、崩されたり投げられたりしてしまうことを言っておりますけど、それで太極拳の勁を体で理解することができてきました。

「最初は、100回やったら100回負けるでしょう。それがだんだん、100回のうち1回くらいは勝てるようになって、3年くらいしたら、10回くらいは勝てるようになるかもしれません。そんなもんですわ。10年くらいしたら、100のうち90は勝てるかも。」

太極拳は、このくらいの気の長さで練習して、ちょうどいいくらいだと思います。

私もN先生を一瞬でも崩せるのは、いまだに100のうち、1、2くらいのもんです。

しかし、相手を変えて、修行具合の浅い人とやれば、百発百中みたいなかんじになります。これが鍛錬の成果ですね。

理屈も段階に応じて必要になってきますが、まずは練習の数でありましょう。

あせらず、目先にとらわれず、本質を求めて基本を大事に、持続可能な練習方法で、気長に続けておれば、達人への道を歩めると思っております。

 

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