百田尚樹「海賊と呼ばれた男」感想・レビュー

毎度お世話になっておりますガソリンスタンド出光興産の創業者をモデルとした、国岡鐵造の生涯を描いた小説です。

出光って、こんなドラマチックな歴史があったのですね。

私は、倫理法人会という経営者教育団体に所属しておりまして、日頃、いろんな社長さんの苦労話、苦難話を聞きますが、これほどスケールのでっかい苦難の連続話はなかなかないです。

石油で産業が発展し、石油が原因で戦争がはじまり、石油で負け、石油で復興。

そんな時代に、石油会社の団体とか、日本政府や、GHQや、イギリス政府、アメリカのメジャーなど、周りは敵だらけの中、理念を貫き通し、あまたの困難を乗り越え、無理難題に立ち向かい、一代で巨大企業に成長させ、日本社会、国際社会に多大な貢献をした、海賊と呼ばれた男の物語です。

戦争の場面では、「永遠のゼロ」で特攻で亡くなる宮部久蔵さんが、ちょこっと出てきて、おおっ!と驚かせてくれます。

さて、この小説のテーマは、日本の理想的経営者の在り方じゃないかな、と思えました。

タイムカードなし、出勤簿なし、組合なし、クビなし、店員は家族、儲けは度外視、世のため人のため、最善を尽くせ! という理念を戦前戦中戦後、死ぬまで貫き通したのが国岡商店です。

私も会社の経営者でありましたが、タイムカードを導入するも、15分未満の残業時間はカット、自分できっちりつけていた社員から、労基に訴えるで! と脅されました。

売り上げをちょろまかしていた横領社員がいたり、社内で男女問題が発生したり、派閥争いがあったり、怪文書が流れたり、あまりにもショボい。理想に程遠い。鐵造店主とは志が違いすぎまして、結局、その会社はつぶれました。

今の私は家業を継いで、地道にやっております。タイムカードも出勤簿もありませんが、それは社員が全員本当の家族だからです。

儲け度外視で、世のため人のため尽くせるか? といえば、そこまで根性は入っておりません。いちおう、社会の福利を心がけてはおりますが、ほどほどです。あかんなあ~。

国岡商店50周年の式典で「誘惑に迷わず、妥協を排し、人間尊重の信念を貫きとおした五十年であった」と、店主が語られます。

日本中の経営者、政治家、教育者、学者、芸術家、武術家などなどが、この信念を貫くことができれば、日本はどんな素晴らしい社会であり続けられましょうか。

ただいま、私は53歳、今からでも遅くない、国岡鐵造の精神で生きていこうと思います。

>>海賊と呼ばれた男|百田尚樹

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