小川哲郎「玉砕を禁ず 第七十一連隊第二大隊ルソン島に奮戦す」感想・レビュー

フィリピン戦の本、4冊目です。ずいぶん読むのに時間がかかりました。

ひたすら戦闘の記録でした。

これまでの本のような、民間人を殺したとか、仲間の肉を食ったとか、捕虜になったというような話は出てきません。

どういう作戦で、兵隊はどのように動いて、何を知っていて、何を知らないで、戦った、撤退した、全滅した、という話ばかりです。

この話から見えてきたことは、フィリピンでの陸軍司令部はお粗末なものであった、ということです。

まともな作戦を立てられないし、状況の把握もできないし、変化に対応もできないし、兵隊を大事にするという思想がなくて、無駄玉を打つかの如く、兵を投入して死なせています。

将棋の駒でも、もうちょっと大事にするよなあ、というくらい人命軽視、冷淡なのです。

そっちに敵が攻めてきそうだ、そこを守っとけ、死守せよ、と命令を下して、あとは補充もせず、全滅するまでほっとく、という感じです。

前線の兵隊が、いくら死に物狂いで戦ったとしても、上層部は、痛みも感じないし、通信が途絶えたら、おやおや全滅っぽいね、というかんじ。

死地に赴くつもりで出撃した者は、ちゃんと死なないといけない、生きていたら怒られる、肩身が狭い、うっかり助かったら、もういっぺん死にに行かねばならぬ。

敵に勝つというより、味方を減らす方に熱心だったんじゃないかと思えるような作戦なのです。

これ、「永遠のゼロ」でも、そんなことが語られていましたね。

ただでさえ物量に乏しく、兵員も少ないのに、自分達でどんどん減らしていては、勝てるもんも勝てませんわね。

そんな愚かな戦いに、私の祖父は参戦しておったのか…。

生還した支隊長のセリフ。

「戦争は絶対にしてはいけません。たとえどこかの国が侵略してきたとしても、戦ってはいけないと思います」

この考え方には賛成できないのですが、敵に殺されるより先に、味方に殺されるような体験をした人が言うのには、なんとも否定できないように思えました。

ようやく、購入したフィリピンの本4冊、読破しました。

祖父の名前は出てきませんでしたが、登場してきた人々の誰かと同じような死に方をしたのだと思います。

今年は、広島にも長崎にも行きました。戦争がどのようなものか、少しは理解できてきたように思います。

世界は、第三次世界大戦みたいな感じになってきています。災いが降りかかることは、覚悟せねばならぬかもしれません。

戦争は愚かだと思いますが、我が国が再び愚かな戦いをしたらアカン!と思います。

戦うならば賢く、上手に、被害がないように…。負けたらあかん。

そんな戦時の舵取りのできるような政治家、我が国におるのかなあ?

 

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