百田尚樹「ボックス!」感想・レビュー

「ボックス!」は、さわやか青春ボクシング漫画といったかんじの小説でありました。

スポ根の王道みたいなストーリーです。百田先生、こんなストレートな青春小説も、書かれていたのですねえ。

映画にもなりそう! と思ったら、すでに映画化されていました。(そちらはまだ見ておりません。)

舞台は大阪です。なじみのある地名がたくさん出てきます。

物語の中心目線となるのが、高校教師の女性と、高校の特進クラス在籍の学業成績優秀だけど、ひ弱でおとなしいいじめられっ子のユウちゃんです。

ユウちゃんの幼馴染のカブちゃんは、ユウちゃんとは正反対の性格で、明るく無邪気で人情家だけど、鈍感で残酷、気分屋でお下品です。そしてボクシングに天才的才能があります。

カブちゃんはユウちゃんの憧れです。いじめっ子にやられたことをきっかけに、ユウちゃんは、カブちゃんがいるボクシング部に入部します。

女性教師も、ボクシング部の顧問になります。特進クラスの成績ナンバーワンの、ちょっと天然な女の子も、ボクシング部のマネージャーになります。

ちゃらんぽらんでも、天才的に強いカブちゃん。

監督の指導に従って、愚直に黙々と基本練習ばっかり頑張るユウちゃん。

人情あるキャプテン。

プロより強い、強烈なライバル。

選手を軍鶏だと思っている、プロ養成ジムの老トレーナー。

濃いキャラクターが全員、大阪弁で喋ります。

生まれ持っての天才と、努力の人との対比が、スポ根ドラマです。

特訓により、生まれ変わったように強くなる、元いじめられっ子。

天才の挫折。

女教師への恋。

マネージャーの死。

監督の驚愕の過去。

敗北と復活!

そして伝説へ…。

青春ドラマの要素が、みっちりと詰まっております。面白い!

ボクシングをあまり知らなくても、楽しめると思います。

私の知り合いに元プロボクサーが何人かおりますが、私はボクシングはあまり知りません。

しかし、太極拳に置き換えて、とても興味深く読めました。

ユウちゃんの特訓方法が、基本功から套路、そして推手というかんじで進むのです。

左ジャブのシャドーボクシング、つぎに左、右のコンビネーション。いろんなコンビネーションの訓練があって、寸止めマスボクシングから、スパーリングへと、じっくり時間をかけて、進んでいきます。

この順番、ステップは大切ですね。

太極拳も、伝統的なカリキュラムはそうなっていると思うんですが、現代の太極拳教室での、表演とか推手の練習となると、そんな順番は、全然守られていないように思います。

基本をすっ飛ばして、面白そうなところからつまみ食いみたいな練習方法だと、全然モノにならないです。

こういう描写は、さすが、ボクシング経験もある百田先生ならではですね。

素直に楽しめました。

「あしたのジョー」とか「はじめの一歩」が好きなら、マンガは読むけど活字だけの小説はちょっと、という人でも、きっと楽しめると思います。

>>ボックス!|百田尚樹

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