異流派推手交流会で「あなたは達人です!」と言ってもらったのです。
「えっ、ほんと? イエーイ!」と、とっても嬉しくなりましたが、私如きが達人なら、この集まりには達人がゴロゴロいるということになってしまいます。
他の方々が達人か否かはさておき、私を達人だと言ってくれた人の達人認定基準は、だいぶん甘いなあと思ったのでありました。
というわけで、私の思うところの達人基準を、考察してみます。
太極拳のレベルに、初等、中等、高等があるとすれば、私は中等科にて修行中、このペースだともう数年で修了し、高等科に進めるかもしれないとは、前回書きました。
高等科になれば、だいぶんエリートですね。
中等科修了生は、戦場に出陣して戦力になるかもしれないレベルだと考えております。(ドローンとか電子パルスの飛び交う現代の戦場じゃなくて、明とか清の時代)
中等科修了と云えども、戦場に出た瞬間、槍の一突きで死ぬかもしれませんが、幸運にも生き延びたとします。
いくつも戦の経験を積み重ね、だんだんと歴戦の勇者になっていきます。
最前線にひとり取り残されたり、謀略に引っかかったりして、なんども死にそうな目に遭いつつも、敵に恐れられ、味方には頼られ、出世して武将になり、歴史の教科書にも載ります。
なんとか五体満足のまま、定年退職を迎え、故郷の村に帰ります。
激動の日々をしみじみ振り返り、平和を喜び、晴れた日は農耕に精を出し、雨の日は書を書いたり、村の子供たちに武術を教えたりします。
老境に差し掛かり、人と争う気持ちなどすっかりなくなったころ、村に、敵の逃亡兵の一味がやってきます。
荒くたい連中が、食料と女を差し出せとわめき、話し合いに出た村長を、ブスッと槍で突っつきました。
「おやめなさい、おとなしくしておれば、食料ぐらいわけてやる。女はアカン。村長を放し、武器をそこに置きなさい」
「なんだと、この死にぞこないのジジイめ、お前から血祭りにあげてやるわ!」
エイッと突いたはずの槍の先がフワッとなぜられると、槍の兵隊は、うわーっと叫んで、すっ飛んで、田んぼの横の肥溜めに、ドボンと頭から落っこちます。
「このジジイ、何をした!」と、青龍刀を振り上げた二人目の兵隊は、手首と肘を軽くなでられて、地面にグシャ。
それを見て硬直した三人目の兵隊は、ジジイと目が合った瞬間、失禁してへたり込み、気を失います。
「村長、傷を見せてみよ。うむ、急所は外れておる、ワシが手当てするから大丈夫じゃ、安心せい。子供たち、ワシが教えたように、この者どもをヒモで縛り上げて、馬小屋に放り込んでおけ。気が付いたら、飯くらい食わせてやると良い」
これが、私のイメージする達人です。
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