同期の社内起業家の話

今時は、副業禁止どころか、副業奨励の上場企業も現れておりますが、私がサラリーマンの頃は、基本的に勤め人の副業なんて禁止でした。

ところが、副業どころか、就業しながら起業して、しかも自分の勤め先を商売相手にしていた、すごい男がおったのです。平成ヒトケタの頃です。

私の同期の整備士の男でした。自動車整備専門学校出身なんで、同期といっても年下なんですけど。

 

整備士、サービスマンって、たいていは営業マン以上に雇われ根性です。営業と違って歩合給はありませんから、忙しかったら損、みたいな感覚です。

文句は言うけど、向上はしない。

ところがこの男、ペーペーの下っ端の時から、営業部長が考えるような事を考えて、発言しておりました。

販売店の成績は、登録ベースのカウントから、集金ベースに変えたらいい、と言ったんです。

自動車販売会社の販売数というのは、自動車が登録されたものをカウントするんですが、これだと、登録が月末に集中するんですね。

ノルマ達成のために、無理に売るので、値引きも大きくなるし、納車前整備で工場にも集中するし、キャンセルも出やすいし、ひどい場合は架空登録まで出ます。本当は売れてないのに、自社名義で登録したりするんです。

こんなことすると、1オーナー車は2オーナーになるし、新車は中古車になります。
(いわゆる新古車)

車庫飛ばしなんて違法行為も発生しやすくなります。

弊害が非常に多いのです。

これが、集金してはじめて成績となると、商売に隙がなくなります。ごまかしようがなくなります。(完全になくなるわけでもないでしょうが。)

適正な商売になるでしょう。

こういうことは、営業部長あたりが考えるべきことで、サービスマンから出る発想じゃないんですね。びっくりしました。

 

そんな発想のできる彼は、なんと、サービスマンでありながら、携帯電話の販売を始め、会社内でも売りまくり、自分の店を持ちました。

携帯電話が普及し始めた頃で、ゼロ円で配りまくっていた頃です。

店を持っても、自分はサービスマンのまま、人を雇って店番をさせ、勤務先の自動車会社が休みの日だけ、オイルまみれのツナギじゃなく、スーツを着てネクタイを締めて、自分の店に出ていたのです。

携帯電話が世間に浸透してきて売上が落ち着いてくると、こんどは、輸入バッテリーの販売も始めました。

売り込み先は自分の勤め先の工場です。安いので会社もありがたい。

そのうちネット販売まで始めました。

携帯電話が一般的になってきた頃で、まだパソコンなんて持っている人は少なかった時代ですが、ノートパソコン(の前身。ザウルスとかいうの。)なんかを持ち歩いてました。

顧客管理もITでやっておったんです。

そのころ私のいた業販課では、まだ在庫管理も顧客管理も、ノートに手書きです。彼は、自分の勤め先より、遥かに進んでおりました。

それでも、ずっとサービスマンを続けてたんです。サラリーマンの安定した収入は、リスク分散になると考えていたんですね。

ベンチャービジネスが失敗することも、織り込み済みで動いていたのです。

それに、勤め続けているといっても、会社に雇われているというより、会社を利用している感じでした。(しかも、労働組合で役員までしてました。)

 

社内では、やっかみというか、胡散臭い目で見られていたこともあるようですけど、私はけっこう尊敬してました。今はどうしてるんかなあ。

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