太極拳の擒拿について その2

太極拳の擒拿(関節技)は、推手道場で、断片的に教えられることがありますが、ちゃんと系統だって教わったことはありません。

安田先生からは、56種類の擒拿術があると聞きまして、金絲展腕とか青鷹捉兎など、スコーンとかけられたことはありますが、こちらもまだ、系統だっては教わってはおりません。

先生から示されているこの先のカリキュラムと、今の学習ペースから考えると、擒拿をちゃんと習えるのは、まだ何年も先になりそうです。

しかし、見せてもらった、かけてもらったものは、黙念師容である!と解釈しまして、予習を兼ねて、研究することにしました。

さてしかし、Webでは、擒拿について、たいした情報はでてこないのですよねえ。

馮志強老師の古いDVDを入手しましたので、それをもとに考察してみます。

私は少林寺拳法の柔法と呼ばれる関節技は一通り知っております。

私は四段受験不合格の中拳士三段でありまして、少林寺拳法の技はだいたい全部習っており、高校生の頃から、関節の取り合いゲームは大好きでした。

少林寺拳法の柔法と、太極拳の擒拿では、思想や概念は違うように思いますが、技術的には似たようなもんだと思うのです。

その違いも含めて、ぼちぼち考察してメモしていこうと思います。

それは間違っている!とか、ほんとはこうだ!という情報をお持ちでしたら、コメントいただけましたら嬉しいです。

さて、形から入る太極拳と、技から入る少林寺拳法の違いは以前にも書きましたが、関節技についても同じだと思いました。

少林寺拳法の技は、こう攻撃されたら、こう反撃する、という思想で成り立ち、パターン練習をします。

太極拳は太極拳の体術を体に染み込ませ、あらゆるシチュエーションに自動対応できることを目指します。

これは打撃技だけでなく、関節技も同じ思想だと思えます。

ですので、太極拳の関節技は、推手と同じく、虚霊頂勁とかの要諦を守りつつ、相手の動きに合わせて、軽い力で行うべきものと考えました。捨己従人です。

少林寺拳法では関節の逆をとったりツボを圧することで痛みを与えて投げますが、太極拳ではそれは二の次、推手同様、軽い圧力で、相手の中定を崩し、双重に陥れ、我順彼背の状態にする推手技術の補助として擒拿を使うのではなかろうかと考察しました。

痛くなくてもいいってことです。

安田先生にかけられたとき、別に痛くもなかったのに、スコン!と崩されたもんで、そう思いました。

痛みを感じる間も無く、仕留められたって感じ。

これはやはり、悪人には仏罰を与えて懲らしめ、矯正させようという仏門の思想を持つ少林寺拳法と、民間軍事技術として効率的に敵を排除しようという太極拳の違いでありましょう。

少林寺拳法は敵を縛り上げるところまで技が続きますが、太極拳は転がして終わりです。

あとは崖から落とすとか、槍で突き刺すとか?

そう考えると、太極拳のほうが凶悪ですねえ。

さてさて、技術的な考察ですが、基本は四つかと思いました。

敵の手首を捻る方向が四方向です。

相手が掴んできたとか、こちらから取りに行くとか、どっちの手をどっちの手でとか、片手とか両手とか、指を捕るとか手の甲にかぶせるとか、関係なく四方向です。

方向により、順刁(ちょう)腕、反刁腕、正接腕、反接腕という名前がついているようです。

「腕」は支那の言葉では、手首のことです。

(このブログでは新中国成立前から存在する武術に敬意を払いまして、政府、王朝の変遷にかかわらず歴史的に通用してきた呼称として「支那」と呼んでおります。蔑みの意図は全くありません。「中国武術」という呼び名の方にこそ、違和感を感じます)

四方向は、手の平を外側に返して捻る(順刁腕)、内側に返して捻る(反刁腕)、手の平を肘が伸びきる方向に反らす(正接腕)、指先が脇の下に向かう方向に巻き込む(反接腕)、という四つです。

どうやらこの四つを基本として、バリエーションがあるようです。

長くなったので、今回はここまで。

考察は今後、実験、実証に基づいて続けてまいる予定です。

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