擖手

陳式太極拳で一番最初に学ぶ基本功、片手をグルグル回す纏絲功の、細かい指導を受けました。

安田先生に学びだしてから3年くらい経っているように思いますが、毎回、基本動作や、套路の最初の部分、金剛搗碓から単鞭を、みっちり修正されます。

基本功なんて単純なもの、そんなに細かく指導されるところがあるのかと、思われるかもしれませんが、これだけやっていて、まだ課題があります。びっくりします。奥深いです。

指の動き、掌の返る角度、体重移動や方向転換のタイミング、などなど、要求はとっても細かいです。

これが初心者なら、ここまで厳密に要求される意味がわからないと思います。

表演のためならそこまで求められないでしょう。見た目、そう変わりませんし。

しかし、先生の指導を守ろうと、繰り返し繰り返しやっていると、だんだんと感覚が変わってきます。

体感が、より、シャープになってきます。

纏絲が途切れない感覚というのは、最近はまあまあ感じるようにはなっておりましたが、これまでは、なんとなく、細い線が体の中で繋がっていて、手足を連動させているのだなあーという感覚でした。

それが、だんだんと、もっと多くの糸が体の各部分にびっしりと張り巡らされ、撚り合わされて、ぶっとくなり、ちょっとやそっとでは切れないぞ、という感覚に変わりつつあります。

糸がどんどん増えて、ついには、皮膚から骨まですべて纏絲に変わっていくんじゃなかろうか? それが達人の感覚なのじゃなかろうか? と想像しておりますが、そこまではいっておりませんのでまだわかりません。

基本功の感覚が変わってくれば、套路も変わってくるし、推手も変わってきます。

推す手、と書いて推手ですが、本来は「擖手」(かっしゅ)と呼ばれていたそうですね。

「擖」は、削り落とす、こそげるという意味です。

纏絲の感覚がシャープになってくると、たしかに「推」より「擖」のほうが、しっくりくるような気もします。

さらに鍛錬を重ねて、感覚を研ぎ澄まし、カミソリのように、空間を刮げ落すような功夫を纏ってまいりたいと思います。

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