「プリズム」「モンスター」という、キッついストーリーを立て続けに読んだ後の、一服の清涼剤のような物語。
といっても、「永遠のゼロ」に続く百田作品の2作目だったのですね。発表順に読んでいるわけではないので、おかしな順序になってしまいましたが、ホッと一息つけました。これまたキッツい話だったら、百田小説を読むのにめげてしまったかも。
「輝く夜」は、クリスマスイブの不思議な恋の物語5編です。
今は梅雨時でありますが、頭の中でワムとか山下達郎とかイメージしながら読んでみました。
一つ一つの物語はそんなに長くなくて読みやすいです。ドギツイ性描写はありません。
ひとつめの「魔法の万年筆」は、リストラにあった女性が出会ったメルヘンでファンタジーなお話です。ああ良かったねえと、涙が出ます。
ふたつめの「猫」は、派遣社員の女性が幸せをつかむお話。猫を通じて、優しい人同士が不思議な縁をつなぎます。良かったねえと涙が出ます。
みっつめの「ケーキ」は、若くして癌になってしまった女の子の、邯鄲の夢みたいな話です。良かったねえーと思ったら、大どんでん返しで涙が出ます。
よっつめの「タクシー」は、旅先で見栄っ張りをしたために、何年も苦しい思いをする女の子の話。でも苦しんでいたのは自分だけじゃなかった、二人の苦しみが同時に溶けて、よかったねえーと涙が出ます。
最後の「サンタクロース」は、幸せに暮らしているお母さんが、つらかった過去を語る物語です。ひととおり振り返ったとき、子供にちょっとした事件が起こります。それを見たとき、えええーーーッと、ビックリ。SF的メルヘンで涙が出ます。
読んでいて、ふと思い出したのが、手塚治虫のブラックジャックです。
ブラックジャックは小学生のことから大好きで、全巻何度読み返したかわからないほど愛読しておりました。そのころの将来の夢は「モグリの医者」でありました。(今はモグリの太極拳の先生みたいになっております)
ブラックジャックには、ほっこりさせるような、心温まる不思議なお話が時々ありますね。それを読んだ時の気持ちと同じような優しい気持ちになりました。
こういう短編小説も、良いものですね。このくらいなら、書けそうな気もしてきたので、ちょっくら小説家への道も検討してみようかと思います。
>>輝く夜|百田尚樹
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