アマゾンに遠藤靖彦著「真の強さを求めて功夫への道」を、お勧めされたのです。
帯に「日本人には教えるな。中国拳法が秘める”国家機密”クラスの「真の強さ」を手に入れるため、誠実にひたむきにあがき抜いた、レジェンド太極拳家の壮大な苦悩の記録。」という、とっても刺激的なキャッチコピーが書いてありまして、つられました。
最近、百田尚樹作品を立て続けに読んできましたので、まずは、その文章の稚拙さにズコッ!となりました。なんだか余分な表現が多いんです。物語をドラマチックにしようという努力が見られますが、ヌメヌメしたかんじになって、頭に入りにくい。章ごとに挿入されている注釈の方が、余計な装飾がなくて、スッキリ読みやすいです。
まあ、希代の文豪と、物書きでもない武術家の文章を比べるのは酷ですね。
それはさておき、お話は、著者の武術修行人生の記録です。
この方、迷走っぷりが壮大で半端ないです。私もけっこう迷走した方だと思ってましたが、比べ物になりません。世界を股にかけて寄り道、回り道をされています。
はじめは八卦掌にあこがれて、台湾や香港を訪ね歩き、武術界のビッグネームともけっこう縁ができるのですけど、自分の求めているものではないと、縁を袖にしてしまうのですね。
迷走しているうちに、八卦掌じゃなくて、太極拳の修行に進みます。
何人もの名人に師事し、最後は馮志強老師より、日本で普及するための組織運営責任者の任を期待されるも、責任の重圧に負けて、お断りして老師との縁を切るという、行動力を伴う努力家の割には、思い込みの激しい不義理なヘタレってかんじです。
あかんたれの告白みたいな私小説でありました。
(すみません。実際の著者を知らないので、作品から受けた印象だけで感想を述べております)
でもまあ、いろいろと共感できるところはありました。
功夫が何かわからんと悩むも、だんだんと新たに得られる感覚とか、あー、わかるわかる!ってかんじです。
著者は、中国で最初に行われた武術表演大会で優勝されています。自身では、自分の実力がわからない、功夫がなんだかわからない、大会に出てみたらわかるかなーと期待して出場したつもりが、いきなり優勝となり、どういうこっちゃ! となります。
私も大阪府の大会で、初出場でいきなり金メダルと銅メダルをもらってしまったので、その気持ち、ちょっとわかります。私は素直に喜びましたけど。
中国での大会は、マスメディアに大いに取り上げられたそうですが、優勝者のはずの著者のところには誰もこず、感謝を伝えようとした陳小旺老子にはそっぽを向かれ、中国の武術協会から締め出されたというエピソードがありました。
このあたり、中国の政治がらみの微妙な話ですね。
公的な機関で教える武術は、形ばかりの偽物で、本物は正規ルートでは学べなくなっていたと、当時の事情がうかがえます。今もそうなのかしれませんけど。
まあ、当時の武術業界の事情や、往年の名人たちの素顔がうかがえて面白かったです。
敬愛する馮志強老師に内緒で、実戦派とされる先生に習いにいったら、憎たらしい日本人、いじめたろ!みたいにしごかれて、そのとき食らった点穴が30年後に効いてきて、死にそうになったところ、妻の足つぼ押し治療で助かった!愛の力!みたいな話があるのですが、文章力が弱くて、全然感動できなかったのは、残念です。
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