「陳式太極拳をすると膝を壊す」
まことしやかに流布されている都市伝説です。
だいぶん前になりますが、上海から来た太極拳(楊式だったか?)の先生が、「陳式の人は整形外科のカモだ!」と言っておられて「そんなことあるかい!」と心の中で憤慨しておりました。
私は膝を傷めたことはないし、安田先生の門派でも、そんな人はいないといいます。膝に蹴りを食らったり、推手で膝から落とされたりして、負傷することはあるみたいですが、套路の練習で故障することなんか無いってことです。
しかし、太極拳で膝を傷めている人は、実際におられます。陳式に限らず。
高難度競技套路なんかは、明らかに膝に悪いことをしているように見えますが、高い姿勢でゆっくりやっている24式の選手でも膝を傷めている人はおられますね。
原因に、ハタと気づきました。
金曜日の晩に、ときどき練習に来られるK氏を見ていてわかりました。K氏は同い年の合気道男子です。
最初は推手に興味を持たれて来られたのですが、今は、基本功と套路の始めのところをやっています。
K氏は、なにしろ股関節が固い!
毎日柔軟体操をしているということで、多少柔らかくなっているような気もしますが、まだまだ全然固くて動きが悪いです。
K氏が太極拳の姿勢を取ろうとすると、どうも体重が膝に載ってしまって、そのまま続けると膝をいわすなあと思えたのですが、その原因は、股関節の動きが悪くて、十分に折り込めないからだと、私は判定いたしました。
K氏の体が固いということと、K氏の姿勢が悪いということはわかってましたが、そこに因果関係があると閃いたのは初めてです。なんで今まで気が付かなかったのかな? 最近、自分の股関節の動きに気づいたことで、人の体がわかるようになったのかも。
膝に載らないように、後ろの椅子に腰かけるつもりで~と伝えて、椅子に座っている姿勢と膝に載っている姿勢での、動きやすさの違いを実演したりして、ここが肝だと認識してもらえるように努めました。
後ろにひっくり返りそう、きつい!という感想が出ました。よしよし、それでよい。きついようでも膝関節は楽になっているはず。
これができてくると、体重は片足にしか載っていない感覚ができてきて、体重移動や方向転換がスムーズになっていくはずです。
練習するときはそこに注意して、日頃から良くしゃがんでくだされ、とアドバイスしました。
太極拳は、昔の支那の人の生活習慣が土台となっております。当時の人にとって、こんなことは練習するようなことではなく、普通にできていたと思うのです。
近代文明は、人類の生活を楽にする方向に進み、人体は退化しました。
ですので、我々現代日本人が古の技術である太極拳を習得するためには、そこから始めないといけません。
昔の人がステップ1から始めるとしたら、我々現代人は、ステップ0とか、マイナス1から始めねばならぬのです。(マイナス1って、ゴジラみたいだ)
そこに気づかないまま套路や推手の練習に入ってしまうと、やればやるほどに膝を傷めたりして、いつまでたっても太極拳らしい動きができないのではないか? と考察したのでありました。
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