女性が、いざという時に身を守る術について書いてみます。
といっても、格闘技のテクニックを書くわけではありません。
そういう技術を身につけるのには、やはり武道とか格闘技の道場に通ってハードな修行をするのがいいとは思いますが、それには時間がかかりますし、根性が続くかどうかという問題もあります。
たいていの女性は、時間もかけず努力もなしで、手っ取り早く、強盗や痴漢に遭った時に身を守られればいい、と思っていますでしょう?
そうです。そもそも、人々がみんな倫理的で治安が良ければ、護身術など必要のないことです。
だいたい武術を修得したいなんて思う女性は変わってます。マニアックでストイックです。彼女たちは、護身目的じゃなくて、向上心とか、チャレンジ精神に突き動かされております。
普通の女の子は、霊長類最強になりたいわけじゃなく、すぐに役立つ簡単な方法や知識がほしいだけだと思いますので、そういうことを書いてみます。
目次
護身術なんぞ役に立ちません。
護身術が役に立たないというのは言い過ぎですが、チョロチョロパッパと覚えたような格闘テクニックなんぞは、役に立つどころか、害であるといってしまいましょう。
そういう私は、剣道7年、少林寺拳法20年、太極拳も20年、柔道は学校の授業でちょっとだけ(といっても8年)、やってきてますので、多少は格闘技術についての知識はあります。
そんなにムキムキのマッチョではない、ひ弱な男子ですけど。
そんな私が結論から言うと、身を守るのに必要なのは、格闘技術じゃなくて、心構えです。
テクニックは、あるに越したことはないですけど、生半可な技術では、単純な腕力に勝てないです。
守りと攻めでは、圧倒的に攻撃側が強いものです。(攻撃は最大の防御ともいいますでしょう?)
女性が男性の腕力の差を埋められるほどの防御技術をもつことができれば、それはもう達人レベルです。1日講習でパンチや蹴り技を覚えたところで、そんなレベルになることはないです。
シマウマがライオンを蹴っ飛ばしたところで、多少の時間稼ぎにしかならないです。
それより、集団の縞模様になってライオンの目を眩ませながら全力で逃げるというのが、シマウマの護身術です。
実戦では難しいことは使えないという例
護身術が必要となる、いざという時とは、どういう時でしょうか。
暴漢や強盗、変質者が、暴力を使って直接アタックしてきたときですね。
具体的には、電車の中で痴漢にあう、夜道につけられて襲ってこられる、荷物をひったくられる、いい男だと思ってたら酔っぱらって豹変、車で山奥に連れて行かれる、というようなことでしょう。
そんなかんじで、他人が、突然襲ってきたときと考えてください。
(恋人同士とか家庭内のDVは、心理的要素が大きいので、別の話とします。)
本やネットなどでよく説明されているのは、相手がつかんできたら、関節を曲げるだの指を取るだの、目潰しするだの耳をひっぱるだのという格闘術です。
でも、こういうの、難しいです。単純動作のように思えても、そうとう練習が必要です。
少林寺拳法三段の私でもとっさに関節を決めるのは難しいです。つかまれた場合、まずは、ぶん殴るか蹴っ飛ばして相手が怯んだのち、おもむろに関節を取っていくことになります。(少林寺拳法の関節技はだいたい当身とセットになっています。)
まあ、通常は、つかまれて抵抗しようとすると、先にぶん殴られますね。
それに、当身というのも難しいのです。じつは。
抱きつかれたり、腕をつかまれた場合、相手とは至近距離にあります。この距離でパンチやキックを当てて効かすのは、結構な練習が必要です。相手が興奮状態にありますと、少々当たったところで痛くありません。
相手の急所、つまりお股、専門的には金的といいますが、ここを蹴り上げると効果絶大ではありますが、狙って当てるのは難しいです。ふたつの膝頭のガードをすり抜けて、股間に自分の足や膝をすべりこませるのは、意外にテクニカルな技術です。
局所まるだしのおっぴろげ、ガニ股でよってくる変態なら、ブラブラしている(またはそそり立っている)目印もあるし、当てやすいかもしれませんが、そうでなければ金的より、スネを蹴飛ばすとか、足の甲を踏みつける方が命中はしやすいでしょう。
金的の他にも急所はたくさんありますが、やみくもに叩けば効くというもんでもないです。
それに、中途半端な攻撃は相手を逆上させますので、一発で悶絶させる気でいきませんと。それだけ正確にパワフルにぶちかますには、やっぱり練習が必要です。
あえていうなれば、わりと簡単で命中率が高いのは、開いた手の指の裏側で、パチンと、相手の目のあたりを打つことです。5本の指のどれかが、目に当たってくれれば、しばらく目を開けていられなくなりますので、そのスキに、全速力で逃げます。
ただ、これも、腰砕けのフニャっとした体勢から遠慮がちに打ってもダメです。手首のスナップを効かせて、瞬間的に思い切りよく打ちませんと。頭で考えているようでは、タイミングを逃します。
というわけで、キックやパンチって、難しいのです。襲ってくる相手に当てるのって、サンドバッグを叩くのとは違います。やり方を頭で覚えても、とっさに使えるものではありません。下手にパンチを打てば自分が骨折します。キックしようとして片足になった瞬間にバランスを崩して押し倒されます。
日頃から訓練して、無意識で動けるくらいに体に馴染んでないと、実戦では使えないです。
投げ技や関節技は、さらに難しいです。
週に3日、1日に2時間ミッチリ修業をして、3年くらいしたら、ようやく後輩相手の練習で、たまに成功するんじゃないかな? というかんじです。
太極拳を毎日練習すれば、身のこなしがよくなり、攻撃をさばくのに役立つし、気で相手を吹っ飛ばせるんじゃないか、という淡い期待をもっている人もいるかもしれませんが、たぶん30年はかかります。
なんにしても、即戦力にはなりません。
技術より心構え
で、結局、何が役に立つかといえば、心構えです。こちらは、長く辛い修行を経ずして、一瞬の意識の切り替えで、すぐにできます。
まずは、護身術が必要になる状況を作らないことが大事です。
電車の中で痴漢にあわないように、満員電車を避けるとか女性専用車両に乗るとか、夜道は歩かないとか、ひったくられるような荷物を持たない、持ち方をしない、いい男だと思っても油断しない、知らない人の車には乗らない、などです。
私は男なんで、痴漢の用心はしませんが、駅のホームで最前列に立つような危険なことはしないです。(最近は男も痴漢にあうらしいですが…)
電車が到着、通過するときは、いつも、ホームの壁ギリギリに背中を向けておりますし、だいたい柱の近くにいます。
突然発狂した人に、ホームから突き落とされないようにです。
ホーム下に突き落とされそうな人はゴロゴロ目につきますね。あまりにスキだらけ。不用心。恐れ知らずの命知らずです。
スマホ操作しながらホームの縁をフラフラ歩いている人なんて、指一本で落とせる自信があります。
電車に乗ったら、なるべく周りの人を見渡せるところを位置取ります。男性の私は、痴漢の冤罪になる方が怖いですから、なるべく女性には近づかないですね。これも護身術です。
私は、夜の人通りのない暗い道は平気で歩きますけど、チンピラや酔っぱらいが多そうな道は避けます。人がいなければ襲われることはないですものね。オバケより、チンピラに肩でもぶつけられて揉め事になるほうが嫌です。
人混みを歩くときは、周囲の人の手の届く圏内には、極力入らないようにしています。密着せざるを得ない時は、かなり警戒しますね。私は警戒すると硬直するんじゃなくて、自然と脱力しますけど、これは、長年の武道経験のおかげでしょう。
できることならば、混雑している商店街とか、ぎゅう詰めのイベントとか、満員のエレベーターとか、なるべく参加しない方がいいし、するならリスクを予測して、それなりに備えましょう。
また私は、夜間、早朝の青信号は信用しません。自動車の信号無視が多いからです。世間一般的に安全とされているものでも、疑ったほうが良いですね。
ついでにいうならば、バスの運転手もタクシーの運転手も、あんまり信頼していないです。自分自身がプロドライバーだったもんで、そんなに安心して任せられるものでもないと思っております。居眠り運転で衝突してぶっ飛んでいっても、なるべく命は助かりそうな位置取りをします。
カバンはだいたいウエストポーチを腰に巻いていることが多いです。ウエストポーチはひったくられにくいし、スリもされにくいです。
財布をズボンの後ろポケットに入れるような真似はしません。どうぞ取ってくださいというメッセージか、取られる瞬間を感じとるトレーニングでもしているのかな?と思ってしまいます。
リュックサックは、後ろが見えないので、人混みの中では不安です。山登りの際は、両肩を通しますが、街中では、方っぽの肩に引っ掛けるようにしています。これならすぐに振り回せます。
女性の場合は、ハンドバッグを持つことが多いでしょうか?
ひったくりにあった場合は、無理して引きずられず、カバンごと渡してしまったほうがよいでしょう。
まるまる失っても諦められるように大事なものはいれておかないか、もしくはバックアップできる体制を整えておきましょう。
被害に会ったときは、大声で助けを呼び、警察に即通報です。
怪しい異性には誘われても近づきません。それは、罠です。
若かりし頃には、お姉ちゃんにホイホイついていって、海外の怪しげなアジトで一晩過ごしたような経験もありますが、無事だったのは奇跡だと思います。
反対の立場だったら、単独行動のアホな日本人など、どうにでもできましたものね。拳銃を持った海外マフィアに囲まれて対抗できるのは、空手バカ一代のマス大山くらいのものです。
怪しいと思ったら、近寄らないことです。
こういった心構えは、特別な訓練をしなくても、すぐに実行できます。今日から取り組みましょう。
格闘技でない護身術
襲われた時に、大声を出して威嚇するというのは、おすすめです。人に聞こえる場所なら、襲う方もビビります。
大声を出すのも、練習が必要ですので、カラオケで鍛えておきましょう。
防犯ブザーも良いと思いますけど、機械は作動しないこともありますので、最後はやっぱり己自身が頼りです。
ただ、誰でも良い、人を殺して自分も死刑になりたいなんて狂っている者もおりますので、大声作戦は効果がないこともありえます。とにかく、死に物狂いで逃げましょう。大声は助けを求めるために使いましょう。
護身術と武器
武器の使用は、自己防衛に役立つなら良いと思います。暴漢は、ハンマーで頭をかち砕かれても自業自得だと思います。
でも、武器って普段持ち歩いてないですね。
ナイフなど、銃刀法違反だし、使うのは難しいです。下手をすると、敵に奪われて自分が刺されます。
というわけで、武器なんぞ、持たないほうがいいです。
スタンガンって、私は試したことはないですが、いざというときにあわてず使えるものなんでしょうかね?
あえて武器を使うとすれば、目くらましに使うのが良いです。砂でも砂利でも、小銭でも小皿でも、なんでもぶち撒けましょう。
狙ってぶつけるというより、敵の顔あたりに撒き散らかすのが良いです。 香水や虫よけのスプレーを顔に向かって吹きかけるのはいいかもしれません。
敵が目を閉じているうちに、叫びながら全力ダッシュで逃走です。
実は逃げるというのも、気が動転していると難しいものですから、逃げる練習もしておきましょう。
普段から走りやすい靴を履いている方が良いです。もしくは裸足でも走れるように、足の裏を鍛えておきましょう。
ミサイルに対する護身術
セミナーなんかに参加して、ちょっと格闘テクニックを覚えちゃったりしますと、人間の男相手なら、もしかしたら勝てるんじゃないかと錯覚するかもしれませんが、その考えが危険です。
これが、飛んでくるミサイルだったりすると、戦おうなんて思わないでしょう。
逃げるしかないです。全力でダッシュしても、間に合わないかもしれませんが、ミサイル攻撃には、いちおう対策マニュアルはあります。
これによると、やはり災害にもミサイルにも、普段からの生き延びようとする心構えが大切だとわかります。
女性にも武道のすすめ
さんざん、戦わず逃げよ、危うきに近づくなと書いてまいりましたが、女性にも武道の修業は、おすすめしたいです。
それも、即戦力になりそうな、キックボクシングとかじゃなくて、なるべく修得に時間がかかりそうなのが良いです。
立ち方とか、歩き方とか、礼儀作法などにじっくり時間をかけて、いつになったら技を教えてもらえるの? 入門してもう3年になるけれど…というくらいのがいいです。
こんなんじゃ、全然戦えないわ! たしかに姿勢は良くなり、便秘も治って、風邪も引かなくなったけど…というのが良いんです。
ここまでのんびりやっていると、戦って勝とうなんて思いは忘れてます。それより、意識が自分の内面に向います。
根性が座りますし、表情も締まって、おどおどしたかんじじゃなくなります。おどおどした自信のなさ気な人は、被害に遭いやすいです。
口達者で生意気な人は、痛い目に遭わせてやろうというふうに狙われそうな気がしますが、こういう種類の地味な武道を修行していると、謙虚になって生意気ではなくなります。
怪我の元の生兵法も、試してみたいとも思わなくなります。
試合に出て優勝したい、というような目標がなければ、勝負重視の競技格闘技はおすすめではないです。勝負重視はテクニックに走りがちだし、試合では怪我をします。それに、試合で勝つのと身を守るのとは、似ているようで違います。
勝ち負けに拘らず、じっくりと武道を学んで内面に向き合い、不動心と自律心を養いましょう。
慌てふためくことがなくなり、自分を大切にし、重要なことと、どうでもいいことの区別がつくようになります。
スキがなくなり、根性と根気が養われ、困難に負けなくなります。
そうすると、ヨコシマな人間は寄り付かなくなるのです。身につけた格闘の技を使う機会はないかもしれませんが、それでよいのです。
何の武道がいいかというと、私も、そんなにたくさん経験したわけじゃないのでなんともいえませんが、最近ぽっとでてきて話題になっているような戦場格闘技みたいなんじゃなくて、長い歴史のある精神性重視の日本古来の武道は良いと思いますよ。
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