百田尚樹「プリズム」感想・レビュー

作家の百田尚樹先生は、ご自身のYouTubeチャンネル「気まぐれライブ」で、LGBT法案に大反対を表明されており、推進勢力を、これでもか! というほど罵倒し、悪態をついておられます。

言葉でここまで怒りを表現できるものか!と感心します。さすが作家。

百田先生が、なんでそこまでLGBTに危機を感じておられるのか、一人芝居ができるほど想像力豊かなのか、不思議に思っていましたが、小説「プリズム」を読んで、納得しました。

「プリズム」はLGBTがテーマではなくて、解離性同一性障害、いわゆる多重人格がテーマのお話ですが、この小説を書くにあたって、精神疾患とか、虐待問題とか、それにまつわる過去の社会問題とか、相当に幅広く詳しく勉強されたのだと思います。

それでLGBT法案はアカン!と考えられたのでありましょう。

物語の主人公は、小学生相手の家庭教師の先生、若く見える30代、既婚で不妊に悩んでいる女性です。派遣先の豪邸は美しい庭があり、離れのお部屋があります。その離れに暮らしている男が、実は、多重人格者なのです。

最初の出会いは、野蛮なオッサンという印象だったのが、次に会ったときはチャラい絵描き、まさか同一人物とは思わず屋敷の人間関係を怪しむのですが、やがてキーとなる人格が現れ、どんどん話が展開し、深く引きずり込まれていきます。

物語の中で、多重人格とは何なのか、医学的な見地や、アメリカでの事例、幼児期の虐待との関係、それになんと連続幼女殺害事件の宮崎勤(作中では「M」)も、多重人格者の疑いがあった、という話が出てきます。

多重人格って、すごくシリアスなのです。

むかし、多重人格を扱った漫画「クルクルくりん」(とり・みき)を愛読しておりましたが、あれはギャグ漫画でありまして、奇想天外荒唐無稽なお笑いでありました。もう手元にありませんが、また読んでみたい。

「プリズム」も、お話はフィクションなのでしょうけど、すごくリアリティがあります。

虐待の描写は、胸糞悪くなるほどです。

さらに、これまで読んできた百田小説にはなかったベッドシーンがありまして、これがまた、なんだか生々しくも涙が出るような性描写なのです。

YouTubeで「チ〇チン、ウ〇コ!」と叫んでいる百田おやびんが書いたとは、到底思えませぬ。(ヒント:〇には同じ文字が入ります。)

あまり話題作でもなかったので、面白いんかな? と疑いながら読み出しましたが、やはり百田小説は面白い。引き込まれるように一気に読んでしまいました。

ラストは、主人公の人生も変わってしまって、ハッピーエンドといっていいのか、ああ、こうなったかとふんぎりがついたといいますか、スッキリさわやかではないのですが、新たな人生が始まる感じで、ホッとします。

>>プリズム|百田尚樹

>>クルクルくりん|とり・みき

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