カンフー小説「太児」(仮題)第2話

カンフーコメディ小説「太児」(仮題)の第2話です。

試作品なので、変えていくかもしれません。

なお、この物語はすべてフィクションです。

登場人物の名前とかセリフとか、パクリじゃないか? などと、勘ぐらないでください。

第二話 いじめとカツアゲと強さと弱さのこと

翌日、学校で、道徳の時間に、いじめについての話があった。

担任の堤先生がみんなに聞いた。

「弱い子がいじめられるのかな? 強ければいじめられない? 強いって、どういうことだと思う?」

生徒達が口々に意見を述べる。

「元気で明るい!」

「丈夫で健康!」

「力がある」

「ケンカに負けない」

「友情・努力・勝利!」

「いじめっ子に負けない!」

「誘惑に負けない」

「嫌なことにNOといえる」

「好き嫌いなく何でも食べられる!」

「決めたことをやり遂げる」

「不屈の精神」

「百戦百勝」

「400戦無敗」

「電柱を殴ったら雀が落ちてくる」

「わくわくすっど!」

…クラスメートたちが次々と答えた。

太児は、昨日の試合を思い出しながら、うつむいていた。

(ぼくは強くない…。いじめられる方だ…)

先生の声が、静かに続いた。

「ほんとの強さってね、自分の弱さと向き合えること…かもしれないよ」

弱いことが、なぜ強さなのか、太児には、さっぱり意味が分からなかった。

学校からの帰り道。角を曲がったところで、不良中学生たちに出くわしてしまった。

「おい。ジュース代、置いてけよ」

いきなり腕をつかまれた。太児はびくっとして立ち止まる。

「えっ、もってないよ」

太児はお金を持って学校に行くことはなかった。

「そうか。じゃあ、ジャンプしてみろ」

太児がその場でジャンプすると、ランドセルがバフバフと鳴った。

そこに、拳二が現れた。

「おい、なにやってんだよ。カツアゲしてるのかよ?」

拳児はヘラヘラ笑っていたが、目は怒っている。

「そうだ! 小銭を持ってるかチェックしてんだよ。チャリンチャリンと鳴るはずだからな!」

「…お前ら、脳味噌が頭に詰まってないのか? 札だったら音はしないだろ…」

「…それもそうだ、おい、ランドセルをぶちまけてみろ。ポケットの中も見せろ! お前もだ!」

「…太児、生殺与奪の権を他人に握らせるな!」

拳児は、足を斜めに広げて立ち、右拳を胸の前に構えた。左手の指を広げて胴を守る少林寺拳法の構えだ。

数秒の沈黙のあと、中学生たちは太児を睨みつけながら、去っていった。

角を曲がって見えなくなったところで、「逃げるな卑怯者ーーー!!!」と罵声を浴びせる拳二。

「あーすっきり。太児、大丈夫か?」

「……うん」

「俺の習っている少林寺拳法じゃ、力愛不二って、力がない愛は無力だっていうんだよね。いざとなったら戦わなきゃ」

拳二に付き添われてトボトボと帰る道すがら、太児の胸は、ふがいなさでいっぱいだった。

自分は、弱い。

剣道は負けてばかり。だいたい剣道が強くなったって、刀を持ってなきゃ戦えないじゃないか。剣道はやめて、少林寺拳法教室に転籍しようかな。でも、拳二みたいに素早く動けないしなあ。自分には合いそうにもない…

その夜、太児は、夢を見た。

見知らぬ古びた村のような場所だった。

砂埃の向こう、太陽がきらめく中、ひとりの人が、大地で、静かに動いていた。

ゆっくり、ゆっくり。影と一緒に。風と一体になるように。まるで、剣の舞のような…

目が覚めたとき、太児の心には、奇妙なざわめきが残っていた。

「……あれ、なんだったんだろう」

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