鳥の目、虫の目、魚の目

組織の内部で頑張ったり、個人的な活動を一生懸命するほどに、視点が集中され、世界が狭くなっていく気がします。

先日、私の所属する倫理法人会のミーティングで、組織活動を活発にするための意見交換などをしていたのです。

倫理法人会って、だいたい100人くらいの単位で一つの会となり、地域に分散して活動しています。

メンバーが増えて200人とかになると、単会が細胞分裂みたいに分かれて、増殖します。現在全国で、700ちょいくらいの単会が活動しています。(ミツバチの分封になぞらえてか、単会の分封といっています)

私は入会してもう10数年、はじめはモーニングセミナーで講師のお話を聞くだけの会員でしたが、今は中心メンバーとなって、週一回のセミナー開催日は、早朝5時から会場入りして、準備、リハーサル、朝礼、セミナー、朝食会、反省会と、5時間くらい会場におります。

会員はすでに200人を超えているのですが、さらに活性化するために、幹部会員たちが作戦会議をしょっちゅうしています。

新しい会員を勧誘する作戦、一度入った会員を長続きさせる作戦、会の雰囲気を和やかで楽しくする作戦、情報伝達共有の施策などなど、綿密に組織だって考えられております。会員は基本的に全員経営者なので、組織運営の勉強にもなっています。

さて、ところが。

ミーティングに久しぶりに参加された、重鎮から、物言いがついたのです。

「ちょっと、軽い」と。

重鎮は、地元の会社の社長で、もとは単会の会長等をされていた方ですが、上部組織に引っ張り上げられて、講師として全国を渡り歩いておられる人です。

この会もずいぶん成熟してきたのだから、小さな集まりから拡大していくための運営から、そろそろ方向転換して、学びの中身を重厚に、個人事業主ばっかりの集団から大企業が参加するような団体に、勧誘しなくても先方から入会希望されるような団体を目指してはどうか、と要約するとそんな意見だったのです。

それに反発したのが、最近、毎週参加するようになって、お役もあてがわれて、一生懸命やり始めてきた会員さんでした。

せっかく一生懸命やっているのに、そんなふうに方針を変えられたら、やる気なくなる、みたいな。

まあ、気分はわからなくもないですが、これは「虫の目」しか持ち合わせていない人の感想ですね。

細部には気を配れても、広い範囲の中での自分の立ち位置とか、外部との比較検討とか、これまでの経過とか、これからの時流は見えないってかんじです。

高所から全体を見るのが「鳥の目」、時間の流れを読むのが「魚の目」です。別々の目を持つ者同士が話しても、なかなか嚙み合わないのは仕方がないです。

家庭やビジネス現場、政治の世界でもよくある光景でしょう。経営者と社員、幹部と末端、長老と青年、与党と野党では、話が合わないです。

3つの目をもつには、長年の経験が必要です。3つの目を持つ者は、一つ目小僧に合わせることはできますが、一つの目しか持っていないものには、写楽保介(三つ目が通る/手塚治虫)の思考は理解できません。

分かんない人は、未熟であることを自覚して、素直に学ぶのが良いと思いますが、反発は若者の特権でもあるし、まあ、昔々から繰り返されてきたことなのでありましょう。

さて、無理やり太極拳の話につなげますが、太極拳学習者にも、虫の目しかない人は多いように思えます。

枝葉末節ばかりに気がいって、本質からどんどん離れてるみたいな。大会で高得点を狙うことばかり熱心とか、気が勁がどうのこうのばかりとか。他派との比較とか、人の悪口ばかりとか、鳥の目だけの人もおられそうです。

私は、形や勁などの繊細な部分を学び、他武道他流派の人々とも仲良くし、へたっぴーな頃からブログで記録してきて理想の達人像もイメージできて、虫の目、鳥の目、魚の目、コンプリートです。自分で言うのもなんですが。

まあ、虫といってもミジンコからダイオウグソクムシまで色々ですし、鳥もスズメもいれば大鷹もおり、魚も金魚からジンベエザメまでありますから、レベルの高い低いとは別の話です。

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