推手と言葉

この感覚は前からあって、人にもたまに言ってたこともあるんですが、ランドマークの研修を受けて、ものすごく明確になりました。

推手をしている時の感覚なのですけど、相手を、自分とは別の物体だと思っていると、ぶつかったり離れてしまったりして、取り扱いが難しいです。

でもまあ、たぶんそれが普通の人の感覚です。

しかし、上達してくると、相手とシンクロ、同調してくる感じになります。相手に合わせる感じですね。

さらに、その上の感覚がありまして、相手の体も含めて、全部ひっくるめて自分、という感覚になる時がありした。

そうすると、相手の足を浮かせるのも、自分の足を浮かせるのも、同じ気分になります。相手の足は自分の足なのですから。

いつもいつもそんな感覚になるわけではありませんが、たまになります。

これが、言語化できたことで、さらに楽にできるようになりました。

こっちもそっちも自分、と頭の中で言葉を走らせるだけです。

さっそく、自治会教室に皆に体験してもらいました。

前に見える人も自分です。頭、掻いてみ? といって、相手の頭を搔くという変な実験です。

自分の耳、つまんでみ? とか言って相手の耳をつまんでみたり。

お互い片足立ちになって、どこかで触れ合って、二人で一人づつ、合わせて二本の足で立ってる、バロムワン!(さいとう・たかを)という体験をしてもらいました。

二本の足で立っている、と言えば安定するし、片足で立っているといえば、不安定になります。

それから四正四隅推手。進一退一。

前に見える人間と敵対してぶつかるのではなく、相手の体は自分の体だと、頭に言葉を走らせるのです。

そしたら、それが現実になります。人間にとって現実は言葉が作るので。

前に進む、後ろに引く、相手を敵だと思っているうちは、ぶつかったり離れたりしてギクシャクしますが、自分一人でやっていると思ったら、ダンスをしているようなものです。

相手は自分なのだから、ぴょんと飛ばすとか、しゃがませるとか、思うだけです。

相手が息を吸うとか吐くとかも、思うままです。

思うってことは、太極拳の言葉で言えば「意」「念」ですね。これが言葉で、体を動かすのが「勁」です。

こんな実験をやっているうちに、皆様、劇的に推手がスムーズになりました。

教室に来て、まだ半年もたっていないおばあちゃんも、ぶつからず離れず、進一退一をやります。套路はまだ全然できない初心者ですけど。

站樁功をするときは、足の裏に触れている地面は自分、公園に生えている木々も自分、地球は自分、空も自分、ゴロゴロしている野良猫も自分、そんな気分でやります。

こんなレッスンしている教室は、なかなかあるまい。けっこうイケてるんじゃないかと自負しております。

太極拳の世界観が変わったのは、ランドマークの研修の効果が大きいです。

ランドマークで教わる内容は、ハーバード大学の大学院で教えているのと同じだそうですが、もしかすると、昔々の太極拳を生み出した支那の先人たちは、わかっていたのかもしれません。

実験するたびにそう思えてなりませぬ。

今回の研修は最初のコースの次のコースでしたが、4日間ぶっとおしで、頭がクラクラするほどでした。

受講している時は難しい、混乱する~、と思ってましたが、研修の終わった翌日の太極拳教室で、見え方がガラリと変わったことに驚いたのでありました。

ただ、研修はキツかったです。体を使うことはないんですが、大学少林寺拳法部の夏合宿を乗り越えたような気分で、今は爽快です。

>>ブレークスルーテクノロジーコース

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