三国志に続いて読みましたのは「新・水滸伝」です。
三国志の雰囲気とはうって変わって、エンタメ小説でした。
伏魔殿には百八の魔界の王が封印されていたのですが、権力者が無理な我儘を通したことで、封印が解けてしまいます。
108の魔物は、下界に散らばって、役人とか武将とか事業家とか教育者とか泥棒とか美人武術家とか宿屋のおばさんとか、いろんな人間に生まれ変わります。
最近人気の転生ものと違って、彼らには、転生者という自覚はありません。
バラバラだった108人が、それぞれの立場で騙されて失脚したり、濡れ衣を着せられたり、うっかり罪を犯したりして、捕まったり逃げたり助けられたりしつつ、各々なぜか梁山泊に辿り着き、人数が増えていき、一大組織に成長していきます。
この一人一人のエピソードが面白いのですね。
不倫した妻と、その相手を殺してしまう話がありますが、不倫シーンはほとんどエロ小説です。
吉川英治先生のリメイクによって、エロくなっているのかもしれませんが、原作も多分そうなのでしょう。
中盤からのメンバーは、おおむね政府側の軍人の将とかで、敵方として登場するのですが、内心、汚職まみれの政府に嫌気がさしていたところ、梁山泊の面々に捕まって、説得されて、どんどん仲間に引き込まれます。
これと見込んだ人物を、あの手この手で騙して味方に引き込むという話も面白いです。
108人が揃ったところで天から火の玉が降ってきて、現場を発掘したら石板が出てきて、彫られていた古代文字を解読してみると、なんと全員の名前だった、運命の導きだったのだなあ、というのがクライマックスです。
そのあと、相撲大会で連続チャンピオンを負かすオマケ的エピソードがありますが、そこで「新・水滸伝」はおわり。
原作は、梁山泊の英雄たちが死んでいくところまで続くようですが、ここまで書いたところで、吉川英治先生がお亡くなりになられ、未完の遺作になってしまったのでした。
この物語のテーマは、腐敗した政府に虐げられている民衆が怒って立ち上がり、権力者を懲らしめるという、民衆がスカッとする勧善懲悪なのでしょう。禁書になっていた時代もあったようです。
梁山泊の面々は政府から見ると国賊ですが、民衆にとっては英雄です。
古代から、現在の中共に至るまで、支那の政治は常に権力集中で腐敗して、民衆の怒りを買い、政府は亡ぼされて、次の政府にとって代わられる繰り返しです。交代劇はいちいち血みどろの皆殺しです。
水滸伝も三国志同様、やはり血みどろエピソードでいっぱいです。人命軽視、人権無視、ルール無用、騙すのは常套手段というノリも、三国志と同じです。三国志よりは、下々の者の人間らしい描写がありますが。
現代中国人の感性も、三国志や水滸伝の性質を引き継いでいるんでしょうね。
今の中共に歯向かう民衆の英雄は、なかなか現れそうにないですが、天罡星三十六星、地煞星七十二星、合計百八星の転生者がどこかに雌伏してるかもしれません。
コメント