オリンピック選手だとか、プロのアスリートを見れば、体型が何の競技を専攻しているのかを物語っておりますね。
力士は、ちょんまげがなくても力士だとわかる体つきをしておりますし、マラソン選手は、細いです。格闘技にしても、ボクサーとレスラー、空手家と柔道家では、やっぱり体型に特徴が出ますねえ。
私の好きなのは、体操や水泳など、バランスの取れた体型でありまして、あまりマッチョやスリムすぎるのは好きでないのですけど、私自身は、細い割には、お腹が引き締まっていないという、まあ、人に見せて自慢できるような体でもないです。
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太極拳の達人の体型
で、私が熱心に修行しております太極拳ですけど、名人たちの体型はどうでしょう?
昔の名人・達人の写真などみますと、けっこうデブッチョだったり、やせっぽちだったり、あまり、これこそ太極拳的ボディ!というものがないような気がします。
私の知る人達で、上手な人に共通しているかな、と思うのは、おなががパンと膨れてボリュームがある、太ももの肉がしっかりついている、ということくらいでしょうか?
そんなにマッチョな人はおられませんね。
体型より骨格の動かし方が違う
体型よりも、違いが大きいのは、体の動き、骨の動き方じゃないかと思っております。
太極拳の人って、体がしなやかで柔らかい、というイメージがあると思いますが、太極拳の柔らかさって、体操選手やバレリーナの柔らかさとはまた違っておりますね。
開脚が180度できるとか、そういうわかりやすい柔らかさとは別に、骨盤とか、股関節とか、肩甲骨とか、普通の生活ではありえないような武術的動きをしているいことが、太極拳と、他のスポーツとの大きな違いじゃなかろうかと思います。(他の競技でも、日常生活の動きとは違っているとは思いますが)
骨の可動範囲の問題なのか、その周りを取り巻く筋肉の動きなのか、私にはまだよくわかりませんけど、ちょっとした腰の回し方などでも、名人がスムーズにできる動きが、修行の浅い人は、イテテテ、と内股が痛くなったり、体中のバランスが崩れてうまくできません。
また、低い姿勢を取るために、足腰の筋肉を鍛えねばという気もしますが、これも、スクワットや、縄跳びで鍛えるというのとは違いますね。低く沈み込む場合も、筋力で支えるというより、骨格の構造を動かすことで無理なく楽に低い姿勢を作れるという感じです。
私は、この違いが長らくわからなくて、一生懸命に開脚180度ひらいて胸を床にぴったり付ける練習とか、こどもを肩車してスクワットなどしておりましたけど、それだけではどうしても、太極拳らしい動きになりませんでした。
しかし、ようやく最近、太極拳的骨格の使い方がわかり始めてきた次第です。べつに足を180度開かなくても、つま先が頭の上まで上がらなくても、片足スクワットが10回できなくても、太極拳らしくなるということに気づきました。
バレリーナがカンフーをしても、どうもへんてこなのは、そのあたりに理由があると思います。同じ中国拳法でも、長拳のハイレベルな選手が太極拳を演じた場合も、なんか、ちょっと違うなあ、という気がするのも、そこじゃなかろうかと思います。
太極拳的身体の作り方
あらかじめ書いておきますが、これは修行歴のまだ浅い私の私見です。「太極拳らしい体格づくりのトレーニング」などというふうに教わったことはありません。
でも、ここしばらく、いろいろな先生から学んでいるうちに、今まで間違えていたなあー、これがホントだなあ、と思うようになったことをメモしておきます。
基本功をしっかり練習する
アキレス腱を伸ばすとか、準備運動、柔軟体操をしっかりするより、腕立て伏せやスクワットで筋力アップを目指すより、太極拳に向いた体を作るためには、基本功をしっかり行うのが良いように思います。
套路の順番をひととおりなぞって、ハイ終わり、じゃなくって、雲手ばっかり100回とか、股関節や肩肘の動きなどに気を配りながら、ゆっくりゆっくり毎回微妙な違いを感じながら練り上げていくような練習が良いと思います。
陳式太極拳の基本功は、バリエーションが多くて、実にやりがいがあります。地面すれすれまで沈み込むような動きは、股関節を柔らかくするのに良いですね。やりこむほどに、体が、動きやすくなっていくように感じています。
站椿功
站椿功(たんとうこう)は、同じポーズでじっと立つ練習法です。普通に立って、ボーッとしているだけというのも站椿功ですけど、骨格の構造のありかたを意識するためには、套路の途中でピタッと止まって、そのポーズのまま、しばらくじっとしておくのも、よいですね。
勢いで流していたときには気づけなかったことに気づけます。片足立ちから、足を伸ばしていく途中で止めてみたりすると、いい加減な体勢では相当無理があってしんどいです。
これが、太極拳の要諦を守った動作であれば、…やっぱりしんどいですが、キチッ、ピタッと、ハマる感覚が時々感じられるようになって、あっ、これか!? とひらめきますね。
ゆっくり練習する
早く動くより、ゆっくり動くほうがしんどいのですが、骨や筋肉の動きをしっかり感じることができます。
達人になると、腰の骨や肩甲骨を意識的に広げることができるらしいです。初級者であっても、いま、腰の骨が、こんなふうに広がっている、とイメージするのは、なかなかいいんじゃないでしょうか。
ゆっくり動くのは勁の動きを感じるためとも聞きますが、気とか勁というのは、意識とか、筋肉の動きのことを表しているものだと私は思っておりますので、おなじことでしょう。
ついでにいうと、ゆっくり動いたほうが、新陳代謝が活発になるのか、熱くなって真冬の屋外でも汗をかきます。これは、健康にも良いと思います。
健康的な体型
太極拳の人って、極端なアスリートの体型は見かけませんね。中肉中背、陰陽のバランスが取れた平均的なボディが、ちょうどよいのではないでしょうか?
極端なアスリートって、関節を故障するとか、心臓肥大とか、ホルモンバランスが崩れるとか、いろいろ問題があると聞きます。
太極拳の目指すのは、不老長寿ですから、いかに武術的に強くなろうと、体を壊すのは本末転倒です。
ときどき、太極拳の人でも、膝を痛めている人がおられますが、正しい骨の動きをしていないからだと思います。基本ができていないのに、ポーズだけ難しいことをしようとするからじゃないでしょうかね?
基本は大切です。
ついでに言うと、太極拳は自然な姿勢で、と教えられることはよくあって、普段の日常生活での楽な姿勢でいいのだ、と思っている人がおられると思いますが、これは違いますね。
自然というのは、人間が元来生まれ持っている自然な性質を十分に発揮するのがいい、という意味であって、現代社会の不自然な生活習慣で培われた歪な姿勢や運動方法を用いて差し支えない、という意味ではないのだと私は考えます。
太極拳で要求されるのは、人間の本来の自然な動きなのでありましょう。ですので、体型も本来の自然な人間の体型がいいんじゃないかと思います。
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