現在、私自身が上達するための一番の練習方法は、慢練だと思っています。慢練とは、超ユックリユックリ套路を通す練習です。
最初から最後まで通すこともあるし、途中で、套路にない動きに変化させてみたりもして、一部分しかしないこともあります。
異流派交流会で、こんなことされたなあとか、こんなこと言われたなあと思い出して、じゃあこういう風に動いたらどうなってたかな?とかイメージしながらやって見たり。
または、爪先の角度のちょっとした違いとか、肘の角度とか、目線とか、呼吸とか、しばらく動きを止めて体感を確認したりもします。
やっていると、おお、上達しとる!と実感があります。
さてしかし、この練習をほかの人にも勧めるかといえば、そうでもないです。初心者が同じことをしたって、退屈なだけで1㎜も上手にならんでしょう。
物事には段階というのがありまして、その人のレベルとか、体力とか、経験とか、性格とかに合わせて、効果的な練習方法は変わっていきます。
昔から伝承されてきたプログラムは、子供向けから始まって、だんだんとレベルを上げていくように構成されていたと思いますが、現代日本のそこらの教室では、いきなり套路の順番を覚えて、そのあとは、気とか勁とか幻みたいなことに憧れる、というプログラムになっているように思います。
学校の勉強で言えば、九九を覚えずに連立方程式を習って、プレミアム問題を証明して100万ドルいただけると期待するようなものですね。
最近は、太極拳の形を覚えるより先に、体を柔らかく動かせるように、もうちょい筋力をつけるところから始めた方が良い人が多いように思っています。形だけやってても、そうならぬ。
私の教室では初心者のおばあさんが多いので、立ち方歩き方柔軟体操棒振り体操などいろいろやって、そのようなレッスンにしておりますが、経験者であっても、もういっぺんそこから始めた方がいいよねえと思うことはしばしば。
そこができてないと、難しいところで、先に進めないのです。頭打ち。
できているつもりは、思い違いです。なんかデタラメな動きでごまかしているだけで、そんなん推手に使われへんやん、ってかんじ。
柔軟体操ばっかりやる時期、立っとくだけの時期、基本功ばっかりひたすら練る時期、ひとつひとつの動作をキッチリ固める時期、套路をぶっ通しで何回でも繰り返す時期、重たい武器を振り回す時期、対人練習に明け暮れる時期、古人の残した書物などを研究する時期、そういうのを何サイクルも繰り返しているうちに、だんだんと太極拳のセンスが磨かれ、体も太極拳の体になり、内功も養われ、達人に近づいていくように思います。
思い起こせば、安田先生の御指導がそのようになっておりました。
基本功ばっかり3時間とか、宿題もそれ、とか。それを素直にやってきたからこそ、慢練の値打ちもわかるようになったなあと思います。
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