遠藤靖彦「強さの正体 功夫の練り方」感想レビュー

以前に、遠藤靖彦先生の自伝みたいな本を読んだときは、壮大な迷走をした、ヘタレな先生との印象を持ったのです。

ですので、あんまり期待してなかったのですが、アマゾンおススメに出てきたもんで、「強さの正体 功夫の練り方」を買ってみました。

遠藤先生、やっぱり、あまり文才はないし、迷走っぷりもありますが、この本は、けっこう共感できるところがありました。描いておられるイラスト、私も同じような絵をテキストに書いてます。感覚が近いのでしょう。

共感できるのは、私も大いに迷走してきたからだと思います。

遠藤先生、あまり断言するような書き方はしておられず、自分の感覚ではこうだ、こう思う、みたいな書き方が多いです。しかも、あとがきには、書いているうちに感覚が変わった、とも書かれています。ずーっと感覚は変化し続けているのは、私も同じです。

この本に書かれていることは、遠藤先生の経験による正直な感覚なのでしょう。曖昧で、わかりにくいですが、借り物のパッチもん情報ではないです。だから共感できます。私なら「纏絲の感覚」と言い切ってしまうような感覚を、自分のお言葉で、すごく回りくどく説明されています。

悪くない本だとは思うのですが、しかし、この内容を教科書のように参考にできるかと言えば、ちょっと、どうかなあ~と思うのです。

いや~、読んだところで、わからへんやろ。ってかんじ。

それは、ご本人もそのようなことを書かれておられて、結局は、練りつづけらんことには身につかないと、身も蓋もない結論に至っております。

それは、私も大いに同意します。

長年、太極拳を練りつづけた人が、どんな感覚になって行くのかを知りたい人は、参考にすると良いかと思います。

でも、言っちゃ悪いですけど、私のこのブログの方がわかりやすく、面白いんじゃなかろうか?(手前味噌ですみません)

ひとつ、遠藤先生と私の意見が違うのは、「形は重要でない」という意見です。

遠藤先生は、中身を養うのが重要で、形にこだわっていると、上達しないという意見です。

私もそのように思うことはちょいちょいあったのですが、私自身は、徹底的に形を教え込まれました。

それで今の私があります。

形を覚えても上達しないというのは、教えられる形が中途半端で不正確だからです。

表演向けの形なんぞ、なんぼ美しくできたところで、中身は養われません。

しかし、ほんまもんの伝統の形を、みっちりと、それこそ一度一ミリの違いまで叩き込まれると、勁は生まれます。

それも、一朝一夕の話ではなくて、毎日やって何年もかけて養われるものです。

そこまで体験すると、「やっぱり形から入るべし」という結論に至ります。

しかし、こういう指導って、十羽一絡げに先生のマネをさせてるだけじゃ無理です。

先生が、生徒一人一人の体に合った厳密な形を教え、長年、矯正し続ける必要があります。

集団指導じゃ無理です。年に数回の講習会でも無理です。

生徒の体の状態や、感覚を見極めて、段階に応じて、適切に指導を続けられる師匠が必要です。

生徒の方は、素直に学び、根気よく鍛錬し、熱心に探究しつづけられる素質が必要です。

どんくさくてもいいけど。

そんな師匠と弟子が長年かけて、ようやく本物が伝承されるのだと思います。

さらに達人の領域に入るには、もうひとスパイスが必要です。(ランドマークのアドバンスコースはお勧め)

最初から、そのような学びからスタートできれば、遠藤先生の本はまったく読む価値なしですけど、まあまあ、日本には私みたいに紆余曲折している人は多いと思うので、あー、レジェントと言われるあの有名な先生でも、この程度なんやな、と安心できるとおもいますので、太極拳が上手にならない、なんで~?とお嘆きの方にはお勧めです。

 

コメント