無駄な努力なしに上達する方法

前回、I先生の教室で、生徒さんからいただいた質問です。

「足の筋力がないのですが、低い姿勢でカッコよくやるにはどうしたらいいですか?」

それに対して、「なかなかに舐めてますねえ。そう思うんなら、筋力つけましょうよ」と一瞬、言いたくなったのですが、それでは身も蓋もなし。

どうせなら「低架でカッコよくやるために足腰の鍛錬が必要だと思って、スクワットをしたり、トレーニングジムでレッグプレスをバリバリやっているのですが、うまくいきません。何か違うのでしょうか?」と聞いてほしかったです。

それならば、「そりゃ、全然違いますわ」「ガビーン」という楽しい会話に進んだと思うのですが。

でも、筋力をつける努力なしに、太極拳が上手になりたいという発想は、あながち悪くないようにも思います。無駄な努力をスキップできるからです。レベルアップを目指していくならば、そんな甘っちょろい考えではあきませんけど。

低架になるには、もちろんある程度の筋力は必要ですが、競輪選手みたいなムキムキになる必要はないです。大腿四頭筋やらハムストリングスやらで踏ん張って、自重を持ち上げるという発想ではないのです。普通にしゃがんで立ち上がれる程度の筋力があれば、まあまあOKでしょう。

それより、股関節の柔らかさが不足している人が圧倒的に多いように思います。ここのところ、このブログにもよく書いていますが、みんな骨盤が動かせていない!

私もそうでしたが、この頃ようやく動くようになって、人の動きがよく見えるようになってきました。

骨盤の動きが渋いと、低架式は厳しいです。股関節を柔らかくするための体操をよくやることです。

実はこの日の教室での私の最初のレクチャーは、股関節を柔らかくする体操でした。さっきやったことを、しっかりやっときなはれ、ってかんじですが、質問者は体操が終わった後で来たので、教えてなかったなあ。

そこから、弓歩、虚歩の話に進んだのです。

まずは、高い姿勢での弓歩がしっかりできねば。

ここがテキトーでは、低架はグチャグチャになります。

弓歩も虚歩も、馬歩の変化なのですよ。片足だけに体重が載った状態で、両方の足の裏が地面についているのが弓歩で、片足の踵か爪先が浮いているのが虚歩ですよ、と説明して、馬歩から左右の弓歩、虚歩への変化を体感してもらい、体重移動を意識しての歩法練習をだいぶんやってもらいました。(これだけでタイムアップでした。)

爪先より膝が出てはいけないのですよね? という質問には、膝が爪先より出ているとなぜ膝を傷めるかというメカニズムを説明した上で、膝を意識しても仕方がない、それより頭の位置、虚霊頂勁が整っていれば、姿勢は崩れないという話と、さらには纏絲の話もしました。

「纏絲」という言葉自体ご存じなかったので、かえって説明しやすかったです。インチキ蘊蓄に脳味噌がまだ侵されていない状態がやりやすいですね。

体の一部分の筋肉ではなく、全身に纏わりついている糸のような筋肉を総動員して、正しい骨組みの構造を作っていくんですよ、という説明を、あんまり専門用語を使わず易しく解説したつもりですが、伝わったかなあ?

半年に一度、60分とか90分では、難しいなあという気がしたのでありました。

でも、ここの生徒さん方、わりと上手です。日頃のI先生の教え方がいいのでしょうね。ちなみにI先生は、推手道場での私の後輩なので、私は「先輩」と呼ばれております。後輩、がんばっとる!

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