「太極拳理論の要諦」の感想

太極拳

このところ、太極拳に関する本を読み漁っております。

二十数年前、初めて私が読んだ太極拳の本は、陳正雷老師の「陳家太極拳テキスト」(ベースボールマガジン社)でした。

しかし、この本は、ザーッと流し読みしただけで、20年間放置。

なぜなら、当時、意味がわからなかったからです。

足運び、手の動きはこう、と、写真に矢印を付けて説明されていますが、今ひとつよくわからんし、気の流れはどうとか言われても、さっぱり実感できず。

最近になってようやく、ああ、なるほどなあ、と理解できるようになってきた次第です。

つい先日、この本の続きの老架式2路のテキストを、推手の練習でお世話になっている方からいただきました。

せっかくなのでじっくり読んでみましたら、私がお座なりに、いい加減に練習していたところが詳しく解説されていて、そうだったのかー!と目からウロコ的内容が沢山でした。

この手のテキストって、実際に人から学んで練習をしながら、疑問が湧いてきた都度、読み解くというのが良いように思います。

これから太極拳を学ぼうという人には、こういった動きの解説書は、さっぱり意味不明、独学者も、上っ面の動きばかりを追うことになって、修練には、さっぱり役に立たないのじゃないでしょうか。

目次

太極拳理論の要諦の内容紹介

さて、「太極拳理論の要諦」(銭育才著)ですけど、こちらの書籍は、ナニナニ式太極拳の套路の順番とか、用法とか、そういう話は載っておりません。

副題に「王宗岳と武禹襄の理論文章を学ぶ」とついておりまして、太極拳を学んでいる人なら、たいていの人が何となく知っているであろう、王宗岳の「太極拳論」その他の古い昔の太極拳の経典を、わかりやすく解説したものになっております。

「太極拳論」の原文は、漢字ばっかりの般若心経みたいな雰囲気の短い文章(約500字)ですね。

太極拳論は、太極とはなんだ、という概念や、太極拳は、力が弱く動きの遅い者が速くて強い者を動かすことができるのが素晴らしいのだ、とか、修練の心得とかを、簡潔に説いた文章です。

般若心経と同じく、原文を見ても、現代日本人にはさっぱりわかりません。

経典は他にもいくつかあって、この書籍では、それら古典を、我々日本人にもよく分かるように解説されております。

予備知識として、古い漢文で使われていた漢字の意味は、現代の中国語や日本語とは違ってます、というような話から始まり、誤解されやすい太極拳の用語「ファンソン」とか「含胸抜背」とか「双重」などの言葉の意味も解説されております。

すべて、現代の中華人民共和国Chainaで用いられている簡体字ではなく、簡略化される前の、本来の意味のある文字を用いて、解説されているのが面白いところでして、なるほどーそういう意味だったのかーと、知らなかったことが多かったです。

太極拳理論の要諦は固い理論文章ではなかったです

理論文章ではありますが、そんなに固くなくて、読みやすくわかりやすいです。理論というか、技術の前に概念を知る、マインドセットを持つというイメージです。

これも、全く太極拳を知らない人が読んでも、いまいち理解できないかもしれませんけど、太極拳を学ぶなら、知らないのはまずいのではないかと思います。

特に、他武道や格闘技の経験者は、太極拳の概念からして勘違いしている可能性があると思いますので、ぜひ読むべきです。(私もでした。)

文章は、丁寧にユーモアを交えて書かれておりまして、著者の人柄に好感を持てます。

著者の銭育才氏は、自己紹介によると特に優れた武道家ということもないらしいのですが、長年修行はしていて、若いときの思い込みとか思い上がりのために、素直に指導を受け入れられず、何十年も回り道をしてしまったという失敗談を書かれております。

私もずいぶん長らくダラダラと、進歩もなく漫然と続けておりましたので、とっても親しみを持てました。(この1年前ほどから、ようやく進歩しだしたように思います。)

 

「太極拳理論の要諦」には、他のテキストのように、套路や推手に関して細かい技術的なことは余り書かれておりませんが、概念や目的といったことは解説されています。このあたりを意識しているのと、なんにも知らないで形だけ追いかけているのでは、やはり修練の成果にも差が出るのではないかと思いました。

技術について具体的な記述といえば、立ち方とか、歩き方に関することは、わりとわかりやすく、目からウロコ的なことを知ることができると思います。また、太極拳ならではの準備運動については、けっこう詳しく書かれています。

章の変わり目には、拝師制度とか、著者が推手ですっ飛ばされた話など、コラムが挟まれてあって、これらも面白く読めました。

以上、私の感想です。「150万人の悩める太極拳練習者に贈る待望の名著・復刻版」ということですから、悩んでいる人、行き詰まっている人にはぜひ。

 

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